PMS(月経前症候群)の要因と診断基準・出来る対策
【予防と治療方法】

PMS(月経前症候群)とは

PMSは英:Premenstrual Syndromeの略で、日本語で「月経前症候群」と呼びます
月経前の3~10日の間に続く精神的、身体的な症状で頭痛、乳房の痛み、イライラ、気分が下がるなどさまざまな症状で「調子が悪い」と感じたらそれはPMS(月経前症状群)かもしれません。
月経がきたら症状が治まって「いつもの症状だったか」と気づきます。
体調不良による症状が、月経前に決まって3ヵ月以上続くようならPMSを疑いましょう。

PMSの主な原因

PMS原因1.性ホルモン(過剰反応)

性ホルモンには、脳の視床下部から下垂体→卵巣→子宮へと指令を出す各ホルモンがあります。
注目すべきは、卵巣が出す「エストロゲン(卵胞ホルモン)」「プロゲステロン(黄体ホルモン)」です。
以前は、この2つのホルモンの分泌量、ホルモンバランスがPMSの発症に影響しているのではと言われていましたが、今ではPMS患者と正常者で、ホルモンの血中濃度を比べてみても、両者に差がないこともわかりました。
現在では、この2つを含む性ホルモンの”過剰反応”がPMSの症状の出現に影響しているのではないか、ということがあります。

PMS原因2.性ホルモン(増減)

  • 排卵前にエストロゲンの分泌が増加されるいくことで気分、認知、睡眠、食用、行動など調節する働きがあります。
  • 排卵後にプロゲステロンの分泌が減少されていくことでGABA(ガンアミノ酪酸)、セロトニンなどの気分を落ち着かせる神経伝達物質がうまく働かなくなります。

エストロゲン、プロゲステロンともに「セロトニン」を調整する働きがあります。
この2つの性ホルモンの増減が影響し、PMSを引き起こしている可能性があります。

PMS原因3.自律神経の乱れ

自律神経の不調(交感神経や副交感神経の機能低下・バランスの乱れ)はPMS発症の原因の1つです。
交感神経は精神状態を興奮・緊張を切り替える機能があり、副交感神経は精神をリラックスさせる機能をもつ神経です。
PMS患者は、月経前になると交感神経が「活発」になり、副交感神経が「弱まる」ことが確認されています。
また、その他の原因として、忙しいことや、悩みを抱えたり、ストレスを感じることが多いと症状が出やすいようです。
身体症状が強くでる、又は精神症状が強くでるなど、個人差によって症状もさまざまです。
PMSを引き起こす原因を1つに特定することは難しく、いくつもの要因が影響してPMSを引き起こしていると考えられます。

その他PMSの諸症状によって要因が異なってくることがあるため、下記の記事からご自身の症状に合わせて原因を考えてみましょう。

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身体的症状と精神的症状・PMSの診断基準

身体的症状

  • 手足の浮腫み
  • 腹部膨張感
  • 体重増加
  • 乳房の張り・痛み
  • 頭痛・関節痛・筋肉痛

この他にも身体に関わる症状が数多くあります。下記の記事で解説しているので、ご覧下さい。

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精神的症状

  • 抑うつ
  • 怒り
  • いらだち
  • 不安・混乱
  • 気分が滅入る

PMSで精神的症状が大半を占める場合は、PMDDと診断される可能性があります。
精神的症状・PMDDについては下記の記事をご覧下さい。

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PMSの診断基準について

上記の症状が過去3ヵ月連続して月経周期でそれぞれ月経5日前に、1つ以上当てはまる方はPMSの可能性があります。下記の診断基準も併せてご確認下さい

  • 月経開始後4日以内に症状がなくなり、2週間過ぎるまで再発しない
  • 症状の発症原因が薬物やアルコールの使用によるものではない
  • その後3周期以上にわたり症状が出る
  • 仕事や学業に明らかに支障がある

PMS症状の改善と予防

PMS・PMDDに対する症状の改善やその予防などの対策はご自身で出来ることもございます。
難しいことではなく、小さいことからできることを行い、少しでもPMSリスクを軽減しましょう。

有酸素運動でホルモンバランスを整える

ジョギング、ウォーキング、水泳、最近では、ボクシングやジムトレーニングなどに通われる方が多いかと思われますが、そういった運動でPMSの軽減に繋がります。
エストロゲン(卵胞ホルモン)、プロゲステロン(黄体ホルモン)どちらも過剰に分泌されると、ホルモンバランスが崩れて不調からPMS・PMDDを発症することがあります。
運動を行うと、全身の血流が促されて、全身の細胞へ酸素・栄養が運び込まれ、細胞が活性化して内臓機能が高まります。運動時、適度に太陽からの紫外線を浴びると、ビタミンDが体内で生成されます。 朝のウォーキングのように屋外で行う運動などが良いですね。
子宮や卵巣などの生殖器官と強い関係である女性ホルモン。 運動することで、女性ホルモンが整いやすくなります。
運動後は体に適度な疲労感を与えて、就寝時もぐっすり熟睡できます。
女性は年齢を重ねると、内臓脂肪を減少させてエストロゲンの分泌量が徐々に低下していきます。
運動を取り入れることで基礎代謝が上がり、脂肪燃焼しやすい体を作りだすことで、減少したエストロゲンの働きを補うことができると考えられています。

過度な運動・ダイエットは控えましょう

上記では適度な運動は改善に繋がると言いましたが、負荷の強い過度な運動、筋トレは逆に、ホルモンバランスを乱してしまうリスクがあります。
筋肉へ疲労が溜まり回復までに時間を要してしまうことで、過度な運動を継続していくと疲労感が抜ける前に、さらに疲労感を与えてホルモンバランスが崩れます。
運動、筋トレは、ご自分のレベルに合わせて、徐々に負荷をかけていくようにすることです。

さらに、過度なダイエットも同様にホルモンバランスの乱れが生じます。
厳しい食事制限による栄養不足により、体に充分に栄養が流動せず血流が悪くなります。
栄養というのは生命維持に関わる心臓や、肺に優先的に栄養が回るようになります。
そのため、子宮、卵巣などの生殖器への栄養(エネルギー)供給が後回しになり、充分な栄養が行き届かないことで、ホルモンを分泌する脳の視床下部の働きが弱体化してホルモンバランスが乱れるということになります。

スクワットがオススメ

スクワットは下半身強化最適な運動と言えます。
下半身がしっかりしていることで腹筋などの筋肉、体幹がしっかりして身体のパフォーマンスが向上して、日々の生活が楽になります。
体が疲れにくい、肩こりや腰痛になりにくいなどメリットはたくさんあります。
女性は男性と比べて皮下脂肪が多く、体力面でも劣る点を考量すると筋力増加に時間がかかります。 その中で、お尻やふくらはぎといった脂肪の多いところを鍛えることはとても効率的なのです。 その他、背中や首、肩回りを鍛えることもオススメです。
うつ伏せに寝て、ゆっくり背中を反らすと背筋を鍛えることができます。 身体のパフォーマンスが上がってきたら腕立て伏せや腹筋などメニューを増やしてみましょう。

生活習慣の見直し

PMS・PMDD症状は、日々の生活習慣や精神状態、社会環境の影響を受けやすいものです。

  • 朝食を食べない
  • ストレスで食行動が変わり過食、拒食になる
  • 脂質や糖質の多い食事
  • 運動習慣がない

その他、夜更かしをしたり、アルコールの過度な摂取、残業が続いて生活リズムに支障がでてしまうといった生活習慣は、PMS・PMDD発症に大きな影響を及ぼします。
夜勤などがある職種の方は生活リズムの乱れは致し方ないかもしれません。
その場合は、少しでもPMS・PMDDにならないように食事、運動などで少しでもリスクを減らしましょう。

PMS・PMDDになりやすい人の生活習慣と環境

  • 朝食を毎日定期的にとっていない(朝食をとるのは週に3回未満)
  • ストレスがたまりやすい
  • お腹いっぱい食べないと満腹感を感じない
  • 食後でも好きなものなら入る
  • 卵黄を含む食品、揚げ物、加糖飲料、ファストフード、アルコール週3回以上摂取してしまう
  • 運動するのは週に3回未満
  • 睡眠の質が悪い
  • ネガティブ要素(不安、うつ、敵意、劣等感、不眠、自殺指向)が強い
  • 脂質異常症の家族歴あり
  • コレステロール値が高い

食習慣では、朝食をきちんと食べることや、糖質や脂質をとり過ぎないといったことが大切です。

PMS・PMDDの治療方法

PMS・PMDDに「検査値が正常範囲を超えたていたら要治療」といった明確な診断基準はありません。
婦人科などでは、生活指導、運動療法などのカウンセリングが行われ、薬物による治療が必要な場合は、低用量のエストロゲン・プロゲスチンの配合薬などホルモン療法薬で症状をやわらげます。
腹痛、頭痛がある場合は鎮痛薬を用います。 その他漢方薬による治療を行います。

  • お腹の張りには桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
  • 便秘には桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
  • 頭痛には川芎茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)

などといった漢方薬が使われることもあります。
むくみがひどい場合は、利尿薬を用いりますが、漢方薬では当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)というものがあります。
気分の落ち込みがひどい「うつ」の状態になっていれば、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という薬もありますが、精神症状が強い時は、精神科または心療内科の受診がすすめられます。
漢方薬で精神症状を治療する場合、加味逍遥散(かみしょうようさん)や桃核承気湯(とうかくじょうきとう)といった漢方薬が使われます。
医師が患者の状態をみて漢方薬を選ぶというのはあくまで1例です。

1つの改善策「呼吸法」

心身の機能向上に大きな期待が持てる呼吸法があります。 自宅で1日10分で簡単に精神状態が改善できる見込みがあると言われています。
呼吸法と言っても様々な呼吸法があります。 『腹式・胸式・丹田呼吸法』があります。

腹式・胸式・丹田呼吸法
「目を閉じ8拍吐いて4拍吸って2拍息を止める」この動作を続けて10分間1日1回行います

丹田呼吸法とは背筋をピンと伸ばして軽く目を閉じ、右手または両手を「丹田(へその下)」に置く。
次に丹田に意識を集中させて、身体の中にある空気をすべて口から吐き出す。
その後、鼻から空気を吸い、少し長めに口から吐くことで、心の安定化・活性化をもたらすと言われています。 どの呼吸法も特別なことはなく、とても簡単です。
とにかく呼吸だけに意識して吸ったり吐いたりを行い、頭の中を空っぽにして何も考えない事です。

呼吸法がもたらす効果

呼吸法を行う事で、心がリラックスをしてPMSの諸症状が和らぎ、爽快感に感じられたという研究報告があります。
そしてこの効果は、PMSの諸症状の緩和だけでなく、ストレスを溜めないことで肌トラブルの改善や、私生活の向上にもつながることで人間関係などにも良好な結果を生むことは、誰もが理解できることだと思われます。
椅子に座って目を閉じ8拍吐いて4拍吸って2拍息を止める」この動作でも大丈夫です。

PMS・PMDDに関するQ&A

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PMSって病気なんですか?

A

約7割の女性が何らかの症状をもっていると言われているので正常に月経がある女性のほとんどがPMSと感じていることになります。
その中でも特に、日常生活が送れないほど症状が強く出ている場合は、婦人科へすぐに受診を検討しましょう。

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PMS・PMDDは我慢できるなら我慢した方がいいのでしょうか?

A

無理に我慢する必要はありません。
何らかの病気が原因である場合もあるので、辛いと感じている場合は一度、婦人科への受診を推奨します。

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PMS・PMDD症状への対処法は何ですか?

A

まずは生活習慣(睡眠、適度な運動、禁煙、飲酒制限など)身近なセルフケアの改善からしていきましょう。
次に、認知療法と言われる対処法で、自分の月経の周期にあわせて、日頃の体調や気分の変化を記録していきます。
これは、周期に伴う症状や発症程度を再認識することで、その周期の過ごし方を自分で意識することができることで、症状の軽減に役立つといわれています。
ただ、症状に重く悩まれている場合は、婦人科への受診を検討しましょう。

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PMS・PMDDへの対処法にはどれくらい効果がありますか?

A

その人にあった最適な対処法を選べるかが重要です。 個人差やそれぞれの対処法によって得られる効果は異なります。
しかし、我慢して何もしないことより試してみる事で、自分にあった対処法が見つかるかもしれません。

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月経前のPMS・PMDD症状が重い人は月経中の症状も重いですか?

A

月経困難症という月経中の症状が重度の方は、月経前の症状も強い方がいますがその因果関係は、学術的に明らかになっていませんが、PMS・PMDD症状が強い人の方が月経中の症状も強いという傾向にはあるようです。

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PMS・PMDDの人は妊娠しにくいですか?

A

PMS発症の原因は背景に、いくつもの原因が存在する可能性があるため、不妊の原因が直接的にPMS・PMDDが関係している可能性は少ないと思います。
PMS症状がある=排卵が正常に起こっているということなので、排卵障害による不妊の可能性は考えにくいと思われます。 気になる方は婦人科で検査をしてみましょう。

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PMS・PMDDが悪化してしまう生活習慣はどんなものがありますか?

A

食生活(栄養バランス)や生活の乱れ(睡眠、運動など)、脂質・塩分・糖分・カフェイン、アルコールの過剰摂取、喫煙が症状が要因と言われています。

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どんなPMS症状がありますか?

A

PMS症状は多岐にわたっており、100種類とも200種類とも言われています。
症状の重さに関係なくご自分の為にもPMSの症状を感じたらお近くの婦人科などで一度診察をしましょう。

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PMS・PMDD症状がどの程度で病院の診察を受けるべきですか?

A

症状の大小関係なく、生活の中で少しでもPMS・PMDD症状による不具合を感じるようなら、婦人科を受診した方が良いでしょう。

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婦人科に行きたくないです。

A

PMS症状でお困りなら、一度、婦人科へ受診をしましょう。 他の病気が隠れていないかなど調べる為にも良いでしょう。
それでも、通院に抵抗があるようでしたら、薬局(ドラッグストア)で薬剤師に相談して、漢方やサプリメント、OTC医薬品(一般用医薬品)などを試してみてはいかがでしょうか。
ただ、漢方薬は本来、体質や症状から専門医がその人にあった漢方を選んで使用します。 既製品の漢方薬を試して症状が改善されない場合は、婦人科を受診しましょう。

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PMS治療に用いられる医療用医薬品「ピル」の安全性はどの程度でしょうか?

A

医師や薬剤師の適切な指導、処方の下、使用するのであれば安全でしょう。
しかし、安全性の問題からピルが使えない方もいますし、ピルも数種類の物がありますのでどのピルを使用、選択するか専門の知識が必要です。
安易にネット等で購入し、独自の判断で使用するようなことは絶対におやめください。

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PMS・PMDDに良いとされる漢方は何ですか?

A

当帰芍薬惨散(めまい、むくみ)・桂枝茯苓丸(腹部膨満感)・加味逍遥散(精神症状) ・桃核承気湯(精神症状)・川芎茶調散(頭痛)などが用いられています。
他にも漢方薬は多数ございますので、あなたに合う漢方を選ぶには専門の知識が必要です。 婦人科や薬剤師などの専門家にご相談ください。

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食べると良いもの、悪いものはありますか?

A

明確なことは解明されていませんが、 控えた方が良いものとして、ミネラルの吸収を妨げるカフェイン類や血糖値の変動を引き起こす糖分の多い菓子類。 むくみを悪化させる塩分の多い食事などがあります。
食べた方が良い食事としては、カルシウムを多く含む乳製品、マグネシウムなどのミネラルも多く含む緑黄色野菜があります。

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月経前にダイエットで体重が減りにくい理由は何ですか?

A

月経前は身体が水分を溜め込む時期なので、その分、体重が減りにくい時期になります。

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