最近男性機能の元気がない、ED治療薬を使ってもなかなか効果が安定しない、このような悩みを抱える男性も少なくなりません。
実はその背景には肥満が関係しているケースがあるかもしれません。
本記事では、EDと肥満の関係性、そしてダイエットがED改善に与える効果について医学的な視点から解説します。
肥満がEDを引き起こす理由とは?【メカニズム】
肥満とED(勃起障害)は、一見すると直接関係がないように感じられるかもしれません。
しかし医学的には、肥満は勃起に必要な体の仕組みにさまざまな悪影響を及ぼす状態であることが分かっています。
勃起は単純な現象ではなく、脳・神経・血管、そして陰茎の中にある「海綿体平滑筋」が連携して起こる、非常に繊細な血管・神経の生理現象です。
この過程のどこか一つでもうまく機能しなくなると、十分な勃起が得られなくなります。
肥満は、血管・ホルモン・代謝・神経の働きに影響を与えることで、この勃起の仕組みを複数の側面から妨げてしまうのです。
男性ホルモン(テストステロン)低下とED
肥満、特に内臓脂肪が増えた状態では、体内で慢性的な炎症やホルモンの乱れが起こりやすくなります。
脂肪細胞は単なるエネルギーの貯蔵庫ではなく、さまざまなホルモンや化学物質を分泌する組織であり、これが体のホルモンバランスに影響します。
その結果、肥満の男性では血液中のテストステロン濃度が低い傾向があることが、複数の臨床研究やレビュー論文で報告されています。
さらに、肥満に伴う炎症や代謝異常が、脳(視床下部・下垂体)から精巣へとつながるホルモン調節の流れに影響し、結果としてテストステロン分泌が低下しやすくなることが示唆されています。
参考サイト
Kelly DM, Jones TH. Testosterone and obesity. Obes Rev. 2015 Jul;16(7):581-606. doi: 10.1111/obr.12282. Epub 2015 May 15. PMID: 25982085.
テストステロンは人間にとって重要なホルモンです。
- 男性機能を保つ(性欲、精子生成、勃起機能)
- 筋肉量の維持
- 骨密度の維持
- 精神面安定、認知機能維持
などの重要な役割を持っています。
そのため、肥満によってテストステロンが低下すると、性欲が湧きにくい・朝立ちが減る・十分な硬さが得られないとったEDに関する症状が現れやすくなります。
加齢のせいと思われがちな変化の背景に、体重や内臓脂肪の影響が隠れているケースも少なくありません。
血管機能の低下(血管内皮機能障害)
勃起はペニス内部の海綿体に大量の血液が一気に流れ込むことで起こる現象です。つまり、EDは血流の問題と深く関係しています。
- 慢性的な炎症反応が続く
- 酸化ストレスの増加
- インスリン抵抗性(血糖を下げる働きが鈍くなる)
肥満になると体内で上記の状態が起こりやすくなります。
これらは全て血管の内側を覆う血管内皮細胞の機能を低下させる原因となります。
血管内皮は、血管を広げる物質(一酸化窒素など)を分泌し、血流を調整する重要な役割を担っています。
肥満になるとその働きが弱くなり、結果として十分な血流が陰茎へ運ばれにくくなり、EDを招く可能性が高まります。
参考サイト
Virdis A. Endothelial Dysfunction in Obesity: Role of Inflammation. High Blood Press Cardiovasc Prev. 2016 Jun;23(2):83-5. doi: 10.1007/s40292-016-0133-8. Epub 2016 Mar 21. PMID: 27000854.メタボリックシンドロームとEDの関係
肥満は、単に体型や見た目の問題にとどまりません。
内臓脂肪が増えることで、
- 高血圧
- 糖尿病
- 脂質異常症(コレステロールや中性脂肪の異常)
といった状態を併発しやすくなります。
これらをまとめてメタボリックシンドローム(いわゆる「メタボ」)と呼びます。
これらの病態に共通しているのは血管に継続的な負担やダメージを与えるという点です。
血管が硬くなったり、血流が悪くなったりすることで、全身の臓器への血流が低下しやすくなります。
勃起は血管、そして血流の働きが重要なため高血圧や糖尿病、脂質異常症を伴う肥満の方では、ED発症のリスクが更に高くなることが知られています。
中にはEDがきっかけで生活習慣病やメタボが見つかるケースもあり、EDは単なる性機能の問題ではなく、血管を含めた全身の健康状態を反映する症状の一つと捉えられるでしょう。
肥満があるとED治療薬が効きにくい理由
ED治療薬(PDE5阻害薬)は、多くの方にとって有効な治療手段ですが、肥満や糖尿病、高血圧を合併している場合、効果が十分に実感できないことがあることも知られています。
これはED治療薬そのものが効かない、ということではなく勃起に必要な土台となる血管や血流の状態が悪くなっていることが影響されると考えられます。
肥満の状態では、
- 血管が広がりにくくなる(血管反応性の低下)
- 血管を拡張させる一酸化窒素(NO)の産生が減少する
- もともとの血流が不足しやすい(基礎的な血流障害)
といった変化が起こりやすくなります。
ED治療薬は、血管を拡張させる働きを助ける薬であり、血管自体の機能が著しく低下している状態では、期待したほどの効果が感じられない場合があるということです。
そのためED治療薬を使用する際には、薬だけに頼るのではなく、肥満や生活習慣の改善を並行して行うことが重要と考えられています。
血流、血管内皮機能、ホルモン環境の改善が起こることで、ED治療薬の効果が安定しやすくなる可能性がある ということです。
ダイエットでEDは改善する?体重減少がもたらす効果
ダイエットや体重減少というと、見た目を良くすることが真っ先に思い浮かぶかもしれません。
しかし、EDの改善という観点で本当に重要なのは体重が減少し、体の中で何が変わるかという点です。
生活習慣改善により、内臓脂肪が減少すると、
- 血管が広がりやすくなり、血流が改善する
- 男性ホルモン(テストステロン)の分泌が回復しやすくなる
- 勃起の状態を評価するEDスコアが改善する
といった変化が起こります。
ED改善のために避けたい自己流ダイエットの落とし穴
一方でダイエットというと、激しい運動をいきなり始める・極端な食事制限・サプリメントや健康食品などに頼るなどと言った自己流ダイエットに走ってしまう方も少なくありません。
しかしこのような方法は下記の問題に繋がり、結果としてED症状を悪化させてしまうことがあります。
- テストステロンの低下
- 強いストレスの増加
- 筋肉量や骨密度の低下
特に、短期間で急激に体重を落とそうとするダイエットは、体にとって大きな負担となり、ホルモンバランスや自律神経の乱れを引き起こしやすくなるため焦らず段階的にできるダイエットが好ましいです。
ダイエットは頑張りすぎるのではなく、無理なく継続できるような形で生活習慣を改善していくことが大切です。
| 運動 | ウォーキングなどの軽い有酸素運動、水泳
筋トレ:最初は軽めで十分 |
|---|---|
| 食事 | ご飯の量を少し減らし、野菜に置き換える
揚げ物、脂質の多い食事を控え、良質なたんぱく質を意識 |
| 睡眠・生活リズム | 睡眠時間を確保(6~7時間以上)
寝不足は避ける |
こちらは例ですが上記のような現実的な改善方法が、継続できるダイエットとしてED改善にとっても有効となります。
また生活習慣を整えたからといって、1日や2日でEDが劇的に改善するわけではありません。
血管機能やホルモン環境の改善には一定の時間がかかるため、出来る限り継続して取り組むことが大切です。
メディカルダイエットという選択肢
先述の通りEDと肥満・体重管理は密接に関係していますが、「何から始めればよいか分からない」「自己流では続かなかった」ということが多いのも現状です。
そのような場合、医師の管理下で行うメディカルダイエットは一つの選択肢となります。
前川クリニックではED治療薬の処方に加えて、医学的評価に基づいた体重管理の一環として、GLP-1/GIP受容体作動薬であるゼップバウンド(マンジャロ)の処方も行っています。
メディカルダイエットで効率よく体重管理を行い、ED改善のステップ、またED治療薬の効果をより引き出しやすくなり、根本的なED改善を目指すことが可能になります。
ED治療以外でもメディカルダイエットについて詳細が気になる方は下をクリック。
全ての方に薬物療法が必要なわけではありません。
まずは生活習慣の見直しが基本となりますが、それだけでは十分に効果が得られない場合や医学的に体重管理が必要と判断される場合にはメディカルダイエットは有効な選択肢となります。
EDと肥満についてよくある質問
肥満だと必ずEDになりますか?
肥満だからと言って必ずEDになるわけではありません。
しかし平均値の男性と比べると、肥満の男性はEDリスクが高くなることが分かっています。
肥満になることによって、
- 血管の働きが低下しやすくなる
- テストステロン値が下がりやすくなる
- 糖尿病や高血圧などの疾患になる可能性が高くなる
といった変化が起こりやすく、結果として勃起に必要な体内の仕組みが影響を受けやすくなります。
そのため肥満はEDの直接原因というよりも、EDを起こしやすくなるリスク因子の一つと考えられています。
どれぐらい痩せればEDは改善しますか?
ED改善のために何㎏痩せればよいと一概に決まっているわけではありませんが、医学研究では体重5~10%程度の減少でも、血管内皮機能の改善・テストステロン値の上昇などが認められ、結果的にED症状が改善する場合もあります。
体重の数字が最重要ではなく大切なのは内臓脂肪が減り、血管・ホルモン・代謝の状態が改善することです。
参考サイト
Esposito K, Giugliano F, Di Palo C, Giugliano G, Marfella R, D'Andrea F, D'Armiento M, Giugliano D. Effect of lifestyle changes on erectile dysfunction in obese men: a randomized controlled trial. JAMA.2004 Jun 23;291(24):2978-84. doi: 10.1001/jama.291.24.2978. PMID: 15213209.ED治療薬を使っていればダイエットは不要ですか?
ED治療薬は非常に有効な治療手段ですが、薬だけで肥満の影響をすべて打ち消すことはできません。
特に糖尿病や高血圧などの持病がある場合は、薬の効果が十分に発揮されにくかったり、飲み合わせに注意が必要なケースもあります。
ED治療薬は血管を広げる働きを「助ける」薬であり、血管そのものの状態を根本から改善する薬ではありません。
そのためED治療薬を使用している方であっても、体重管理や生活習慣の改善を並行して行うことが長期的なED改善には非常に重要です。
メディカルダイエットはED目的でも受けられますか?
はい、当クリニックはED改善を目的として受診することが可能です。
メディカルダイエットは見た目を整えることだけを目的とするものではなく、代謝・血管・ホルモンの状態を医学的に整えることを目的としています。
医師による問診の下で、安全性を確認し処方管理を行うため、自己流ダイエットが続かない・何から始めればいいか分からないという方にとって一つの大きな選択肢になります。