
※現在出ている文献などを収集したコラムです。がん治療に対してイベルメクチンを推奨しておりませんので予めご了承ください
本記事は、イベルメクチンとがん治療に関する研究状況をまとめたものです。
現時点で承認されたがん治療薬ではなく、あくまで研究段階の情報である点にご留意ください。
イベルメクチンとがん
時折話題にのぼるイベルメクチンですが、がん治療に応用できる可能性が研究の中で少しずつ示されつつあります。
日本はがんで亡くなる方が多い国です。薬物療法・手術・放射線療法といった従来の治療法に加え、新しい治療薬が選択肢として加わる未来も、そう遠くないかもしれません。
イベルメクチンの本来の用途
イベルメクチンは日本の北里大学とアメリカのメルク社の共同研究により開発された抗寄生虫薬です。
この薬は寄生虫の神経や筋肉に作用、麻痺を起こし体外に排出させる働きを持っています。ヒトや動物に寄生するダニや線虫によって引き起こされる感染症の治療に用いられています。
1970年台後半に土壌中の放射菌が産生する物質をもとに開発され、その発見と応用は2015年のノーベル生理学・医学賞(大村智氏)につながりました。
イベルメクチンの承認状況
日本 | 疥癬や糞線虫症などの寄生虫感染症に対して承認
沖縄など気温が高い地域で発生した際など |
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海外 | 河川盲目症(オンコセルカ症)やリンパ系フィラリア症など
アフリカや中南米では、広範な寄生虫感染症の治療に使用されており、年間約3億人が服用しています。 |
イベルメクチンとがんはなぜ話題に?
イベルメクチンは従来、疥癬や糞線虫症などの寄生虫感染症に対して使用されている薬です。
新型コロナの流行期には、一時期イベルメクチンがコロナ治療薬になるのではないかと研究される場面もありました。現在ではコロナ治療薬としての承認はされていませんが、話題になった薬の一つです。
元々イベルメクチンの抗がん作用に関する研究はこれまで細胞実験(in vitro)や動物実験(in vivo)を中心に行われておりましたが、新型コロナでの話題をきっかけに、イベルメクチンという薬に対して注目度や話題性が高まったと言えます。
ただしヒトでの大規模臨床試験は現時点で行われておらず、イベルメクチンは医薬品としてのがん治療適応は世界的に承認されていません。
イベルメクチンのがんに対する文献紹介
胆管がん
九州大学の研究チームはマウスを用いた実験でイベルメクチンが胆管がん細胞の増殖を抑制する可能性があるかを確認しました。
研究概要 |
マウスの肝臓でMOB1という遺伝子を欠損させると、肝内胆管がんや混合型肝がんが発症することを発見。
発症には、シグナル経路の下流でYAP1やTGFβ2/3が増加することが重要であると判明。
ヒトの原発性肝がんの組織でも、同様の経路異常が確認された。 |
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方法 | ヒト胆管がん細胞を移植したマウスにイベルメクチンを投与し、腫瘍の増殖速度を評価。 |
結果 |
投与群では腫瘍の進行が抑制される傾向が見られた。
・YAP1を標的とする薬剤を天然物ライブラリーから探索した結果、抗寄生虫薬イベルメクチンとミルベマイシンを発見。 ・MOB1欠損マウスおよびヒト肝内胆管がん細胞を移植したマウスで、イベルメクチンが腫瘍の抑制に有効であることを個体レベルで証明。 |
臨床応用までの課題
卵巣がん
大阪大学・テキサス大学の研究チームは網羅的遺伝子スクリーニングを用いた実験で、イベルメクチンが卵巣がんに対して抗腫瘍効果を示す可能性を確認しました。
研究概要 |
マウス生体内で shRNAライブラリー および CRISPR/Casライブラリー を用いて、上皮性卵巣がんの新規治療標的を探索。
数千〜数万の遺伝子をスクリーニングした結果、核輸送因子KPNB1 を含む複数の新規治療標的を同定。 |
---|---|
方法 |
・ヒト卵巣がん細胞を免疫不全マウスに移植し、網羅的遺伝子スクリーニングを実施。
・KPNB1を標的とした阻害実験を行い、腫瘍形成や進行への影響を評価。 ・既存薬ライブラリーからKPNB1阻害作用を持つ薬剤を探索。 |
結果 |
イベルメクチンが上皮性卵巣がんにおける腫瘍縮小効果を高める可能性を確認。
・KPNB1依存性の抗腫瘍効果を示すことを発見。 ・標準治療薬 パクリタキセル との併用により、強い腫瘍退縮効果が得られた。 |
臨床応用までの課題
臨床試験や標準治療との併用検討が必要。
抗がん作用を仲介するヒト細胞内標的分子の発見
イベルメクチンは近年がんに対する効果が注目されてきましたが、その分子レベルでの標的は不明でした。
岩手医科大学と北里大学大村智記念研究所の共同研究により、イベルメクチンが結合するヒト細胞内分子が初めて同定されました。
成果は2022年3月に iScience に発表されています。
研究概要 |
研究チームはイベルメクチンが細胞内でどの分子に作用するかを探索し、抗がん作用や抗ウイルス作用のメカニズム解明を目指す。
その結果、複数の結合たんぱく質を特定し、特にTELO2が主要な標的分子であることが明らかに。 |
---|---|
方法 |
・化学プローブを利用してイベルメクチン結合タンパク質を網羅的に探索。
・同定された候補分子のうち、シグナル伝達経路への関与を詳細に解析。 ・Wnt/β-カテニン経路やimportin経路など、腫瘍形成やウイルス感染に関わる経路に着目。 |
結果 |
イベルメクチンはヒト細胞内で主にTELO2に結合してWnt/β-カテニン経路を抑制し抗腫瘍効果を示す一方、importinにも結合することで抗ウイルス作用のメカニズム解明にもつながる可能性が示された。
・TELO2がイベルメクチンの主要な結合標的であることを発見。 ・イベルメクチンがTELO2に結合することでWnt/β-カテニン経路が抑制され抗腫瘍効果を発揮。 |
臨床応用までの課題
またWnt経路の阻害がヒトにおいて安全かつ有効であるかを確認するためには、動物実験や臨床試験による長期的な検証が必要であり、臨床応用には時間を要すると考えられる。
医学的な注意点
イベルメクチンは抗寄生虫薬として長年の実績があるものの、ガン治療における有効性や安全性は確立されていません。
ここでは今までの研究段階での有効性と、想定されるイベルメクチンの飲み方、そして自己判断での使用リスクについて整理しています。
イベルメクチンのヒトでの有効性
細胞実験 | 複数のがん種で効果確認 | 抗がん作用の可能性を示唆 |
---|---|---|
動物実験 | マウスモデルで複数のがん種で効果確認 | 胆管がん・卵巣がんなどで成果 |
臨床試験(ヒト) | 限定的だが進行中 | 有効性・安全性は未確立 |
ヒトの抗がん効果はまだ確立されておらず、動物実験での結果がそのままヒトに当てはまるとは限りません。
今後の臨床試験結果を慎重に判断する必要があります。
がんに対するイベルメクチンの飲み方について
以下は国際オーソモレキュラー医学協会による報告の中で紹介されている仮説的な服用方法です。
以下は承認された治療法ではなく、あくまで研究途上の仮説的プロトコルとして報告されているものです。本コラムでは参考情報として紹介するのみで推奨するものではありません。
※自己判断での服用は重大なリスクを伴うため、推奨するものではないことをご理解ください。
がんの悪性度 | 想定された服用量 | 頻度 |
---|---|---|
低度 | 0.5 mg/kg | 週3回 |
中度 | 1.0 mg/kg | 週3回 |
高度 | 1.0~2.0 mg/kg | 毎日 |
自己判断での服用リスク
イベルメクチンはがん治療用として承認されておらず、用量や投与方法は確立されていません。
標準治療を受けず自己判断で服用すると、副作用や他薬との相互作用により思わぬ健康被害を招く可能性があります。
自己判断での服用は避け、必ず医師の管理下で治療方針をすることを推奨します。
イベルメクチンとがんについてのまとめ
イベルメクチンは寄生虫感染症の治療薬として長年使用され、安全性について豊富な実績がある薬剤です。
近年はがんに対する効果が基礎研究で報告されており、胆管がん・卵巣がんなどで有望な結果が示されています。しかし、いずれも細胞やマウスといった臨床段階の前であり、現状ヒトでの有効性や安全性は確立されていません。
2025年現在、臨床試験が一部進行していますが結果が出るまでには時間がかかります。
がん治療は科学的根拠に基づき安全性が検証された標準治療を受けることが最も重要です。
その上で「既存薬の新しい活用法(ドラッグ・リポジショニング)」の研究が進むことは将来のがん治療に新たな選択肢をもたらす可能性があり、イベルメクチンはその点で今後の展開に注目が集まっています。
イベルメクチンは現時点のがん治療薬ではなく、今後の研究が期待されている候補の一つとして理解していただければと思います。
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