
※現在出ている文献などを収集したコラムです。新型コロナ感染症関連に対してイベルメクチンを推奨しておりませんので予めご了承ください
本記事は、イベルメクチンと新型コロナ感染症に関する研究状況をまとめ解説したものです。
イベルメクチンと新型コロナ
新型コロナウイルス流行当初、確立された治療薬が存在せず治療選択肢が限られる中で既存薬の転用が盛んに検討されました。
イベルメクチンもその一つとして研究、臨床試験が進められることとなり、一部医師や著名人・メディアやSNSで大きく取り上げられました。そういった流れで「新型コロナに効果があるのでは」と一時的に多くの注目を集めていた薬です。
しかし2025年現時点で新型コロナウイルスに対する有効性は認められていません。
流行期の混乱の中では、様々な情報が飛び交い不確かな情報・誤った情報も混在することが多いです。
そして、むやみに薬を服用することは副作用や健康被害のリスクも伴います。現在の正しい情報から、なぜイベルメクチンが話題になったのか経緯も含め詳しく見ていきましょう。
イベルメクチンとは・本来の適応症
イベルメクチンは、北里大学の大村智博士(2015年ノーベル生理学・医学賞受賞)らが米国メルク社と共同開発し、現在では寄生虫感染症治療薬として世界中で使用されている薬です。
本来、日本で承認されている適応症は以下の通りです。
- 疥癬(かいせん)
- 腸管糞線虫症(ちょうかんふんせんちゅうしょう)
一方、海外ではオンコセルカ症(河川盲目症)などに使われており、熱帯地域で寄生虫による失明を防ぐ公衆衛生上、重要な役割を果たしてきた薬でもあります。
COVID-19に対する効果が期待され研究が進められた背景
2020年に世界中で新型コロナ患者が急増し、死亡者が増える中で新しい治療法がないか各国で模索されていました。
そんな状況下で、オーストラリアの研究グループが細胞実験においてSARS-CoV-2(COVID-19新型コロナを発症する病原体)の複製をイベルメクチンが抑制するという報告されました。
この研究がきっかけとなり、世界各国でイベルメクチンが新型コロナウイルスに有効か臨床実験が実施されました。
またイベルメクチンは安全性が高く、薬価も安かったために早々に中南米諸国を中心として新型コロナの治療や予防に使用されるようになりました。
世界各国でCOVID-19患者が急増し死亡者が増加する状況下に,ヒドロキシクロロキンやドキシサイクリン,アジスロマイシンなどが治療目的で使用されながら無効であり,有効な治療法が模索されていた中で,オーストラリアの研究グループからin vitro の感染実験系でイベルメクチンがSARS-CoV-2の複製を抑制することが報告された。
イベルメクチンのCOVID-19に対する臨床試験の世界的動向
八木澤 守正, Patrick J. Foster, M.D., 花木 秀明, 大村 智 2021 年 74 巻 1 号 p. 1-43
奇跡の治療薬と呼ばれた経緯
2021年から2022年にかけて、各国で臨床実験が行われたり、一部医師も言及するなどの状況で次第に”イベルメクチンはもしかして新型コロナに効くのではないか”とメディアやSNSを通じて世界中で注目されるようになりました。
- 各国で臨床試験が行われ、一部医師や研究者も有効性に言及
- メディアやSNSで拡散、「奇跡の治療薬」と期待されるようになった
- 当時はまだコロナに対して確立された治療薬が限られていたため、多くの人が既存薬の転用(ドラッグ・リポジショニング)に望みを託していた
その結果、パンデミックの時期は日本でもクリニックでイベルメクチンの処方を希望する患者が増え、国内では入手できないとなると海外・個人輸入で入手しようとする人も急増していきました。
動物用イベルメクチンの誤用・健康被害
一方で、アメリカなど海外ではヒト用のイベルメクチンが入手できない方が家畜用の駆虫薬として販売されていた動物用イベルメクチンを自己判断で服用するケースが相次ぎました。
ヒト用と動物用では有効成分量や添加物が異なるためもちろん安全性が保障されていません。成分過剰摂取などにより吐き気・下痢・頭痛だけでなく、重度の中毒症状や入院例など多くの健康被害が報告されています。
この問題を受けて、FDA(米食品医薬品局)やCDC(米疾病対策センター)は注意喚起を行っていた過去があります。
コロナの治療薬としての評価
その後、国内外で数多くの臨床試験や解析が進められましたが、2025年現在もイベルメクチンが新型コロナに有効であるという明確な根拠は確認されていません。
新型コロナ治療に対して未承認
2023年5月に北里大学が行っていた臨床実験の論文が発表されました。
しかしこの研究においても、結果として新型コロナに対してイベルメクチンの有効性を示す結果は得られませんでした。
WHO(世界保健機関)、米国FDA(食品医薬品局)、日本の厚生労働省を含む主要な公的機関はいずれも「新型コロナ治療薬として承認していない」と公式に表明しています。
つまりイベルメクチンは日本だけでなく世界各国で、新型コロナ治療薬として承認されていないというのが現時点での結論となります。
コロナ後遺症への効果はあるのか?
コロナ後遺症が社会問題化
新型コロナのパンデミックも落ち着き5類感染症に分類された現在も、新型コロナ後遺症(Long
COVID)と呼ばれる長期的な症状に悩む人は少なくありません。
代表的な症状には、強い倦怠感、集中力の低下(ブレインフォグ)、嗅覚・味覚障害などがあり社会問題にもなりました。
実際2021年頃の調査では、確定診断され入院後に退院した方のうち、診断から12ヵ月後に何らかの症状が残っていた割合は約3人に1人(33%)と報告されています。
現時点でコロナ後遺症に対する有効な治療薬や確立された治療法はなく、小規模な研究はあるものの大規模臨床試験で効果を示したという薬はありません。
そのため基本的には症状に応じた「対症療法(例:リハビリ、カウンセリング、漢方薬など)」が行われることが殆どです。
一部クリニックでのイベルメクチン処方
こうした背景から、イベルメクチンが後遺症にも効果を示すのではないかと注目され、一部クリニックが自由診療としてイベルメクチンを処方している例もあります。
しかしこれは、あくまでも”試み”で行っている段階のため、公的機関からの標準治療として認められていないのが現状です。
イベルメクチンの入手方法と注意点
世間を騒がせていた薬ということもあり、実際イベルメクチンを入手したくてもできないのでは?と疑問を持っている方もいるかもしれません。
イベルメクチンの入手方法は病院だけではないですが、それぞれ注意点、メリットデメリットもあるので見ていきましょう。
入手方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
国内病院(適応症あり) | 保険適用で処方可能、安全性が担保される | 新型コロナ・後遺症目的では処方されない |
クリニック(自由診療) | 自費で処方を受けられる場合がある | 科学的根拠なし、全額自己負担 |
個人輸入 | 比較的入手しやすい、価格が安い | 偽薬・成分不明・副作用リスク、自己責任 |
日本国内の病院・クリニック
先述した通り、イベルメクチンが日本国内で承認されている適応症は「疥癬」と「腸管糞線虫症」です。
これらの疾患と診断された場合には保険適用で処方を受けることが可能です。
一方で新型コロナ感染症やその後遺症に対しては承認されていないため、通常の病院で処方されることはまずありません。
一部の自由診療クリニックでは処方例があるものの、適応外使用となるため科学的根拠や安全性が十分に確立していないという点で注意が必要です。
どうしてもイベルメクチンを使用したいという方は一度オンライン処方を受け付けているクリニックの医師にご相談してみるのも手段の一つではあります。
個人輸入で入手可能
イベルメクチンは個人輸入代行サイトなどを通じて海外から入手することが可能です。
しかしこの入手方法にはいくつかのリスクがあります。
- 海外製品の品質や成分が保証されない
- 健康被害が発生しても自己責任となる
- 偽薬や成分量偽造などの可能性
厚生労働省も医薬品の個人輸入には十分注意するよう注意喚起が行われております。
「どうしてもイベルメクチンが欲しい」という方にとっては助けになるサービスかもしれませんが、不確定なリスクや安全性を重視する場合は推奨できない入手方法になります。
詳しくは以下からもご確認ください。
新型コロナとイベルメクチンのまとめ
イベルメクチンは寄生虫感染症には有効性が高いと認められている一方で、新型コロナウイルス感染症やコロナ後遺症に対する効果は現状認められていません。
メディアやSNSを中心に一部の方が効くのではないかと考え、薬が欲しいと言った方もゼロではない現状。
しかしながら、イベルメクチンは決して“魔法の薬”ではないことを念頭に置き、服用を検討する場合は信頼できる情報源をもとに判断することが重要です。
気になる症状がある場合は必ず医師に相談しましょう。
前川クリニックのLINE診療・イベルメクチン処方は
365日24時間対応受診から即日発送
- 来院不要で、手軽に通販同様買える!
- 初回最短5分、LINEですぐに受診できる!
下のボタンをタップ