咽頭・性器クラミジアとは
【症状(男女別)・原因・治療法について】

クラミジアとは

"クラミジア感染症"※以降・クラミジアとは、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)という細菌によって感染する感染症の1種です。
性交渉により感染する性器クラミジアが特に多く、日本国内で最も多い性感染症(STD)の1つになります。
男性の場合、尿道や肛門に感染し、女性の場合、子宮頚管部に感染します。
男女共通では、咽頭に感染した場合咽頭クラミジアとなります。

クラミジアに感染していても気付かないことが多く、成人のクラミジアの保有率は3~5%と言われているため知らぬ間にパートナーなどに感染させてしまっているケースが多いです。

クラミジアの症状

クラミジアに感染すると咽頭であれば、のどの痛みや違和感、性器であれば排尿時の痛みや違和感などが症状としてあらわれます。
性器クラミジアは女性だと子宮頸管炎・男性だと尿道炎を発症します。
これらは症状があらわれた場合で、多くの感染者がクラミジアに感染したことに自覚がないことが多い性病です。

こんな状態の方はクラミジアかも

クラミジアの症状例

クラミジアは症状があらわれても軽度のことが多く、風邪の諸症状であったり、ただの体調不良と勘違いしやすいです。

  • 喉の違和感がある、または長期間治まらない
  • 耳が聞こえにくい
  • 首のリンパ節が腫れている
  • 微熱が続いている
  • 喉が痛い
  • 軽い咳が続く

性器・咽頭クラミジア男女の主な症状と起こる病気

男性 女性
性器クラミジア ・排尿時に違和感や、痛みを伴う
・白い膿や、透明な膿が出る
・睾丸が腫れて圧迫感や、痛みを伴う
・おりものが黄色っぽくなったり、量が増える
・おりものが臭くなる
・排尿時に違和感や、痛みを伴う
・不正出血が出る
・性行為のときに痛みを伴う
・下腹部が痛む
起こる病気
・尿道炎
・精巣上体炎
・子宮顕官炎
・骨盤内炎症性疾患(子宮内膜炎、卵管炎など)
・子宮外妊娠, 不妊症
咽頭クラミジア ・咽頭の腫れや、痛みを伴う
・咳が出る
・発熱
感染しても見た目にあきらかな変化はなく、風邪と区別がつかないことが多いです。

自覚症状のないクラミジア

クラミジアに感染した場合、発症まで約1~3週間潜伏期間がありますが自覚症状がないことが多いです。
特に男性よりも女性の方が症状に気づかない場合が多いとされています。

Some refer to chlamydia as a “silent” infection. This is because most people with the infection have no symptoms or abnormal physical exam findings. Studies find that the proportion of people with chlamydia who develop symptoms vary by setting and study methodology. Two modeling studies estimate that about 10% of men and 5-30% of women with a confirmed infection develop symptoms.


訳:クラミジアを「沈黙の」感染症と呼ぶ人もいる。これは、クラミジア感染者のほとんどが症状や身体検査所見の異常を認めないためである。クラミジア感染者のうち、症状が出現する人の割合は、設定や調査方法によって異なることが研究で分かっている。2つのモデル研究では、感染が確認された男性の約10%、女性の5~30%が症状を発症すると推定されている。

Chlamydia – CDC Detailed Fact Sheet

海外のデータでは感染が確認できた人でも、症状が現れるのは男性であれば10人に1人ほどしかいないと推測されます。
男性であれば90%、女性であれば70%以上の人が症状がみられないと推測されます。

クラミジアになる原因

クラミジアは粘膜や体液から性器や喉などの細胞に侵入し、増殖することで発症します。
そのためクラミジアに感染する主な原因は、粘膜を介する性行為によるものです。
これはインフルエンザなどの感染症とは異なり、病原菌自体は弱いためトイレ、プール、銭湯、空気中の飛沫感染などが原因で発症することはありません。

性交やオーラルセックス、咽頭に感染している場合、リスクは低いですがキス・ディープキスなどでも感染する可能性はゼロではありません。
口内に傷がある、または出血している状態だとリスクが高まることがあります。

また、クラミジアは母子感染することがあります。
妊婦がクラミジア感染しているときに分娩した場合、産道を介して新生児に感染する可能性があります。

主な感染経路

性器クラミジア
男性:尿道 女性:膣や子宮頚管の粘膜
性器からの分泌物や尿、精液等から菌が排出
行動 ・セックス(性交渉)
・オーラルセックス
→フェラチオ, クンニリングスなど
咽頭クラミジア
唾液から分泌(そこから舌や唇にも菌が付着する)
行動 ・オーラルセックス
→フェラチオ, クンニリングスなど
・キス(ディープキス)
新生児クラミジア
分娩の際に産道から粘膜や粘液に触れることで新生児に感染する
状態 ・妊娠時の女性がクラミジアに感染している

クラミジアの治療法

咽頭・性器クラミジアはどちらもジスロマックやクラビットなどの抗生物質にて治療を行います。
特にテトラサイクリン系薬、マクロライド系薬、およびニューキノロン系薬など基本的には経口抗菌薬を用います。

当クリニックでは陽性が判明した後、下記にある有効成分アジスロマイシン・レボフロキサシンこれらの抗生物質の治療薬を処方いたします。

マクロライド系
抗生物質 用法/期間
アジスロマイシン(ジスロマックなど)
1日1回4錠を服用
ニューキノロン系
抗生物質 用法/期間
レボフロキサシン(クラビットなど)
1日1錠で7日間服用を継続

治療後は再検査が必須

完治して咽頭や性器に菌が完全に無くなったことを確認することが重要です。

先述した通り、クラミジアは症状があらわれにくい性病です。
そのため"ピンポン感染"や無症状の状態で感染拡大の可能性が高いため再検査を行う必要があります。

治療後2~3週間目あたりに検査を受けることが推奨されます。
症状が治ったからと言って処方の薬を全て飲み切らない、飲み忘れなどが原因で完治しないということもあるため注意が必要です。

クラミジアの感染対策

感染予防のポイント

  • 不特定多数との性行為を避ける
  • コンドームを使用する
  • 定期的に検査を受ける
  • 体調不良の時は性行為をしない

基本的に粘膜の接触で感染するため、コンドームを付けて直接の粘膜接触を避ければ感染リスクは大幅に低くすることができます。
また口との接触で咽頭クラミジアの可能性もあるため、オーラルセックスでもコンドームを使用することが大切です。

また、風邪をひいていたり、疲労困憊であったり体調が良くない場合は免疫力が低下しています。
性病だけでなく、どの感染症にも言えることですが、免疫力低下している時は感染しやすい状態なので性交渉を避けることが予防の一つです。

クラミジアの再感染

クラミジアは完治しても免疫ができる病気ではありません。
クラミジアに感染している人と、性交渉など粘膜接触をすれば何度でも感染する可能性は十分にあります。
初感染、再感染ともに感染者数が多い病気のため、日頃からコンドームを使用したり、定期的な検査を行うなどして 対策を行う必要があります。

ピンポン感染とは?

ピンポン感染とは、クラミジアを含む性感染症において、自身が完治しても、パートナーが感染をしている状態で性交渉を行うことにより、再び感染し合う、うつしうつされるループが生じる現象を指します。
パートナー同士が互いに治療し完治しない限り、病原菌は粘膜などに残り、再感染のリスクが存在します。

ピンポン感染とは?・イメージ画像

このピンポン感染を防ぐためには、自身またはパートナーに感染が疑われる場合、速やかに検査と適切な治療を受けることが重要です。
また、片方だけが感染を確認した場合でも、もう一方も症状の有無に関わらず検査と治療を受けることが大切です。

クラミジアを放置すると

咽頭クラミジアであっても、性器クラミジアでも自然治癒しません。
発覚したのち、自然治癒したと考えている方もネット上にはちらほらいますが、たまたま服用していた薬剤等が症状に効いたという可能性があります。
この性感染症は感染したことに気が付かない人が多いと言われていますが、症状を放置しておくと合併症や後遺症を引き起こしたり、不妊症の原因となったり、妊婦であれば母子共々クラミジアに感染する可能性があります。

男性の場合

症状が悪化すると尿道から奥へとクラミジアが移動し、前立腺炎や精巣上体炎が引き起こされることがあります。
病原菌が奥まで感染してしまうと治りづらい病気へと発展してしまいます。

男性不妊症の原因に!?

さらにクラミジアの症状が広がっていくことで、精巣上体炎は悪化したり、前立腺で炎症があると精子の活動を妨げてしまうため、男性不妊症の原因となります。

女性の場合

膣からクラミジア侵入すると、まず子宮頸管に感染して子宮頸管炎となります。
それを放置していると、奥へと感染が広がって子宮や卵管などで炎症が起こり、骨盤内炎症性疾患や子宮内膜炎に発展します。

さらに症状を放置すると、感染は卵管へと続き卵管に癒着が起きて不妊症の原因になります。
妊娠しずらくなるだけでなく、卵管が正しく機能しなくなると子宮外妊娠を起こす可能性が高くなってしまいます。

母子・産道感染

妊娠している状態でクラミジアに感染すると早産や流産の原因となる恐れがあります。
分娩の際に、産道で新生児にクラミジアが感染すると結膜炎・肺炎を起こす可能性が高くなります。

咽頭感染

風邪に似た症状がでるため、咽頭は発症しても勘違いして感染に気が付かないことも多いです。
放置のしている状態が続くと、炎症が悪化し上咽頭炎、扁桃腺炎などを引き起こすことがあります。
また、オーラルセックスでパートナーにうつしたり、咽頭から性器クラミジアにかかってしまったりと感染が広がる恐れがあります。

クラミジアに関するよくある質問

Questionアイコン

クラミジアは症状が出てなかったら治療しなくてよいのでは?

A

クラミジアは自然治癒しません。症状が出ていない状態でも、体に病原菌がある状態だと、性交渉やオーラルセックスを行えば無自覚に感染を広げてしまいます。
また放置する期間が長くなれば男性も女性も不妊症の原因になったり、重い疾患に進展するリスクが高まります。

関連記事

クラミジアを放置するとどうなるのか?

Questionアイコン

クラミジアがパートナーにうつっていないか心配です。

A

パートナーの方も一度検査を受けることをおすすめします。
クラミジアは性行為やオーラルセックスなどで30~50%の確率で感染し、自覚症状がないことも多いため、念のため検査を受けることが重要です。
お互いに病気をうつしあう「ピンポン感染」を防ぐためにも、二人で検査と治療を受けることをお薦めします。

Questionアイコン

クラミジアは性行為ではなくキスでも移りますか?

A

可能性はゼロではありません。
しかしキスだけでの感染率は高くありません。口内に傷や出血があればリスクは高まります。

Questionアイコン

完治した後もまた再感染する可能性はありますか?

A

再感染の可能性はあります。
クラミジアは免疫のできる性感染症ではないため、完治しても予防・再検査することを心掛けましょう。
また「ピンポン感染」といったパートナー同士でうつしあってしまうことも併せて注意する必要があります。

Questionアイコン

治療中に性交渉をしても大丈夫ですか?

A

完全に治療が完了するまでは性交渉を控えてください。
症状が治まっても、最後まで治療をし体内から完全に病原菌が無くならない限り、粘膜の接触で感染します。
また、オーラルセックスであっても、喉の感染は防げないため控えてください。