アフターピルの避妊効果と副作用の違い・持続時間と確率

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アフターピルの避妊効果

アフターピルは避妊をしなかったり出来なかったり、避妊はしたけれども失敗したり、妊娠の不安がある時など、性行為後に使用する緊急避妊薬です。
アフターピルの有効成分は、レボノルゲストレル【72時間タイプ】と、ウリプリスタール酢酸エステル【120時間タイプ】の2種類があり、体内のホルモンバランスを変える事で避妊効果を得られるホルモン剤です。
アフターピルの避妊効果は、主に【排卵を抑制すること】と【受精卵を着床させないようにすること】この2つの作用によって避妊効果を示します。

作用メカニズムについて

排卵を抑制する効果

アフターピルに含まれる「黄体ホルモン」が卵胞の成熟を遅らせ、排卵自体を抑制する作用があります。

妊娠するためには、精子と卵子が結合し受精卵ができる必要があります。
アフターピルの効果によって、排卵が行われなければ、精子と卵子が出会わずに授精することはありません。

アフターピルは、排卵日の前後や排卵日当日でも受精卵を作らせないように作用します。

受精卵を着床しづらくさせる効果

アフターピルは、受精卵になってしまった後でも受精卵を子宮内膜で着床しづらくする効果があります。

通常、排卵後5〜7日前後で着床しやすい環境が子宮内に作られます。 アフターピルを服用すると子宮内が着床しにくい環境へと変化するので、受精卵になってしまった場合でも着床しづらくさせる事で避妊することができます。
排卵された卵子の寿命は24時間であり、卵子が排出されてから24時間以内に受精しないと妊娠は成立しません。
しかし、排卵して受精したとしても、アフターピルを飲むことで子宮内膜を薄くし、着床しにくくすることで、妊娠を回避できます。

受精卵の着床には子宮内膜が必要ですが、アフターピルによりその子宮内膜の増殖が抑制されます。

こうして受精しなかった、又は受精卵が着床しなかった場合、子宮内膜ははがれ落ち出血(消退出血)する事で体外に排出され、妊娠を回避します。

72・120時間タイプの違いと効果期間

アフターピルの成分にはレボノルゲストレル(72時間タイプ)と、ウリプリスタル酢酸エステル(120時間タイプ)の2種類があります。

基本的にレボノルゲストレルもウリプリスタル酢酸エステルも作用は同じで、主に【排卵を抑制すること】【受精卵を着床させないようにすること】上記で解説したこの2つの作用によって避妊効果を示します。

レボノルゲストレルの「72時間タイプ」とウリプリスタル酢酸エステル「120時間タイプ」の異なる点は、避妊効果が有効な時間が長いという点になります。

レボノルゲストレルは避妊失敗後72時間以内の服用を推奨されていますが、ウリプリスタル酢酸エステルは120時間以内の服用でも避妊効果を得ることができます。

また、ウリプリスタル酢酸エステルは避妊目的以外にも、子宮筋腫の治療のために使用されることもあります。

黄体ホルモンのみの避妊薬なので、子宮筋腫の腫瘍を大きくさせる原因の卵胞ホルモンの分泌量をコントロールしてくれる作用があるため子宮筋腫の治療薬としても使われています。

ヨーロッパなどの海外では、レボノルゲストレルよりもウリプリスタル酢酸エステルが避妊効果も高いため、アフターピルの主流となっております。

レボノルゲストレルとウリプリスタル酢酸エスタルの避妊率

レボノルゲストレル「72時間タイプ」とウリプリスタル酢酸エステル「120時間タイプ」の一番大きな違いは、服用するまでの時間経過による避妊効果です。

下記の図の様に避妊に失敗した行為後、24時間にアフターピルを服用する事が出来るようであれば、避妊効果に大きな違いはありません。

服用する時間と妊娠回避率のイメージ

24時間を過ぎると、アフターピルの避妊効果が徐々に低下していきます。
48時間であれば2種類のアフターピルの避妊率は大差ありませんが、48時間~72時間を過ぎると、避妊率におよそ1%もの差が生じます。
さらに時間が経つと、レボノルゲストレル「72時間タイプ」の避妊率は急速に低下します。
しかし、ウリプリスタル酢酸エステル「120時間」は72時間~120時間以内の服用で95%の避妊率を保つことができます。

そのため、72時間を超えてしまう場合は、ウリプリスタル酢酸エステル「120時間タイプ」のアフターピルを服用することが推奨されます。

BMIと避妊効果の関係

BMIとはBody Mass Indexの略です。日本厚生労働省が定めた肥満度を表す国際的基準地です。

2種類のアフターピルに適切なBMI
アフターピルの効果を左右するBMI表

レボノルゲストレルはBMIが25未満の方に対して最も有効です。一方、BMIが30以上の方では避妊効果が低下する可能性があります。
ウリプリスタル酢酸エステルを含む別のタイプのアフターピルは、BMIが30以下の方に有効性を示します。

BMI レボノルゲストレル ウリプリスタル酢酸エステル
~25未満(標準体重) 有効
25~30(肥満度1) 効果低下
有効
31~35(肥満度2) 効果激減
効果低下
35以上(高肥満) 効果激減

そのため、BMIが25を超える方はウリプリスタル酢酸エステルを選択することで十分な効果が得られるとされています。
ただし、BMIが30を超える場合、ウリプリスタル酢酸エステルでも効果が減弱する可能性があります。
基本的にどちらのアフターピルを選択する場合でも、BMIが高ければ高いほど避妊効果が減少する傾向があるため、注意が必要です。

アフターピルの副作用

アフターピルの主な副作用のイメージ

アフターピルには女性ホルモンの用量が多いため、副作用が発生する可能性が高くなります。
しかし、ほとんどの副作用は軽度であり、重大な副作用はまれです。
これらの副作用は一時的なものであり、長期的な症状にはなりません。ただし、症状が数日経っても改善しない場合は、医師や医療機関に相談することをおすすめします。

副作用の種類

ノルレボ(ノルレボジェネリック)副作用例

エラ(エラワン)副作用発症確率
参照元 添付文書
頻度中~高
5%以上
・消退出血(46.2%)
・不正子宮出血(13.8%)
・頭痛(12.3%)
・傾眠
・悪心
・倦怠感
頻度低
0.1〜5%未満
・めまい, 不安
・月経過多
・下腹部痛, 下痢, 腹痛
・貧血
・異常感, 口渇, 熱感, 疲労, 末梢性浮腫

Pharmacy Completeの取締役社長・イギリスで多岐にわたる活動をしている薬剤師デボラ・エヴァンス氏はアフターピルの副作用に関して次のように述べています。

エラ(エラワン)副作用例

エラ(エラワン)副作用発症確率
参照元 PACKAGE LEAFLET
よくある症状
最大10人に1人
・吐き気、腹部(胃)の痛みまたは不快感、嘔吐
・生理痛、骨盤痛、乳房の圧痛
・頭痛、めまい、気分の変動
・筋肉痛、腰痛、疲労感
まれな症状
最大100人に1人
・下痢、胸やけ、風、口渇
・異常または不規則な性器出血、生理量が多い/長期間の月経前症候群、膣の炎症またはおりもの、性欲の増減
・ほてり
・食欲の変化、情緒障害、不安、興奮、睡眠障害、眠気、偏頭痛、視覚障害
・インフルエンザ
・ニキビ、皮膚病変、かゆみ
・発熱、悪寒、倦怠感

副作用発症率の臨床データ

レボノルゲストレル海外臨床試験

レボノルゲストレル海外臨床試験より副作用発症例

レボノルゲストルを使用した海外臨床成績から副作用発症率5%以上となった症状を抜き出しています。
少なくとも4人に1人は現れる出血の副作用、また悪心や疲労感、下腹部痛・頭痛などが比較的出やすい症状です。

ウリプリスタル酢酸エステル臨床試験

ウリプリスタル酢酸エステル海外臨床試験より副作用発症率

エラ(エラワン)の主成分ウリプリスタル酢酸エステルを使用した海外臨床成績から副作用発症率5%以上となった症状を抜き出しています。
こちらは消退出血などの症状は除いた副作用を挙げています。

副作用の持続期間

吐き気・下痢・頭痛など

嘔吐、吐き気、下痢、頭痛などの副作用は24時間以内に治まることがほとんどです。
24時間以上続いてしまうようであれば専門医(消化器内科)または、処方された病院クリニックへお問い合わせください。

少量の出血

少量の出血に関しては不正出血または消退出血が考えられます。詳しい出血の見分け方に関しては下記の記事をご覧ください。
出血の期間は個人差があり、数日で終わることがあれば1週間続く人もいます。
出血期間が長い場合または出血量が異常に多いと感じる場合は妊娠している可能性もあるため、すぐに医師や医療機関にて受診して下さい。

副作用を軽減するための対策

副作用の症状によっては対処が難しかったり、日常生活や仕事に支障が出てしまう可能性もゼロではありません。
現状アフターピルの副作用は軽症でも発症率が比較的高めな症状もあることが分かっています。
アフターピルの副作用に対してどのような対策や対処が私たちはできるのでしょう。

市販薬の使用(吐き気止め・鎮痛剤等)

現在のアフターピルは、従来の避妊方法「ヤッペ法」に比べて発現率は断然低い確率ですが、人によっては対策をしていたにも関わらず、吐いてしまう可能性があります。
アフターピル服用から2時間以内に嘔吐してしまった場合、主成分が十分に吸収されず、避妊効果が得られず無効になってしまうケースがあります。

また、低頻度ですが下痢の症状があります。
よく嘔吐と同様、2時間内に下痢の症状があると効果が無くなってしまうという説がございますが、そんなことはありません。
アフターピルは胃や小腸から吸収されるので下痢症状を起こしても避妊効果は得られます。

そして、これらの症状があらわれる前と後を町の薬局・ドラッグストアで購入できる吐き気止め、下痢止めそれぞれのOTC薬で対策・対処することができます。

吐き気・嘔吐 下痢
対処薬 吐き気止め(制吐剤) 下痢止め
市販薬名
(製薬会社)
・トラベルミン(アルフレッサ ファーマなど)
・アネロン「ニスキャップ」(エスエス製薬)
・サクロン(エーザイ株式会社) など
・ストッパ下痢止めEX(ライオン)
・トメダインフィルム(興和創薬)
・ピタリット(大正製薬) など
服用
タイミング
アフターピルと一緒に服用 症状があらわれてから服用
購入先 ※記載している薬はすべて第2類医薬品です。
通販、薬局(ドラッグストア)で購入ができます。
価格 約600円台~1,000円前後
※マツモトキヨシ調べ

症状が心配または酷い状況の場合は鎮痛剤や吐き気止め、下痢止め等を服用しても問題ありませんが、 併用に注意しなくてはいけない薬がいくつかあるため飲み合わせの詳細については下記のページをご覧ください。

アフターピル関連記事

アフターピルと鎮痛剤等の飲み合わせ・併用注意薬について

出血の対処(消退出血・不正出血)

副作用の出血は市販薬などで抑制することはできません。
おおよその出血症状が出るタイミングは個人差があるため不安な方は予めナプキンやおりものシートを付けて対応するのが良いでしょう。

眠気やめまいへの対処と注意点

眠気やめまいなどの症状は市販薬では対処が難しいです。めまいが酷い場合は無理をせず、安静にするのが最も大切です。
眠気が強い場合は眠気覚ましでもコーヒー一杯程度であれば飲むことは問題ありません。
しかしカフェインの過剰摂取は避妊効果への悪影響も考えられるためコーヒー以外でもお茶やエナジードリンク等のドリンクは飲み過ぎないように注意しましょう。

副作用の眠気・かすみ目・めまい【車や自転車の運転・操作注意】

またアフターピルを服用してすぐ就寝する場合は問題ありませんが、服用後はめまいや眠気などが起こる可能性もあり、車・自転車の運転や重機の操作は危険が伴うため控えた方が良いです。

アフターピル効果・副作用のよくある質問

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アフターピルは着床を止めますか?

A

いいえ、アフターピルの作用は着床自体を止めるわけではありません。アフターピルの避妊効果は、主に以下の2つの作用によって発揮されます。

  • 第一に、アフターピルは子宮内膜の増殖を抑制することにより、着床に必要な状況を作りにくくします。
  • 第二に、アフターピルは排卵を遅らせることによって、受精の可能性を低下させます。

作用について詳しくはこちらをご覧ください。

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アフターピルは血栓症のリスクがありますか?

A

アフターピルの主成分は黄体ホルモン(プロゲステロン)です。一般的に、血栓症のリスクは通常の低用量ピルに含まれる卵胞ホルモン(エストロゲン)の影響によって増加します。
アフターピルの血栓症リスクはゼロではありませんが、低用量ピルよりもリスクは低いと考えられます。

ただし、アフターピルには低用量ピルよりも高い用量の黄体ホルモンが含まれているため、注意が必要です。高頻度かつ複数錠使用してしまった場合は、血栓症のリスクが増加する可能性があります。
また、個人の健康状態や既往歴、喫煙状態なども血栓症リスクに影響を与えます。アフターピルを使用する場合は、医師や専門家と相談し、自身のリスクを評価することが重要です。

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アフターピル服用後、いつから副作用は現れますか?

A

全ての患者様に副作用が現れる訳ではありません。
もし副作用が出る場合は、頭痛やめまいなどは数時間後に現れることがあります。
出血に関しては消退出血や不正出血・人によってタイミングが異なります。 詳しくは下記の記事をご覧ください。

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アフターピル服用後の消退出血・不正出血とは?

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アフターピルを使用すると将来的に妊娠しずらくなりますか?

A

いいえ、緊急避妊の為にアフターピルを使用した後、通常は妊娠するための子宮の働きは急速に回復します。
そのため不妊の可能性には影響しないとされています。