ピル5種類の特徴比較・アフターピルと低用量ピルは併用可能?
【注意点・副作用・血栓症リスク】

ピル5種類の特徴比較【注意点・副作用・入手方法】記事サムネイル

ピルとは?その種類と用途

ピルとは、そもそも英語で"PILL"ですので、直訳としては"経口薬"を意味します。
日本では一般的に「経口避妊薬」を指すことが多いです。卵巣からの排卵を抑制することで妊娠を予防する効果があります。
主に低用量ピルが使用され、一定の量の女性ホルモン(エストロゲン)とプロゲステロンが含まれます。ピルは、正確に服用することで99%以上の避妊効果が期待できます。また、生理痛や生理不順、子宮内膜症の治療などにも使用されることがあります。

ピル5種類の比較

ミニピル(POP) 超低用量(LEP) 低用量(OC) 中用量 アフターピル(EC)
用途 ・月経困難症/子宮内膜症の改善
・避妊
・生理不順改善
・避妊
・PMS改善
・生理痛改善
・ニキビ改善
・月経困難症改善
・避妊
・PMS改善
・生理痛改善
・ニキビ改善
・月経移動
・月経移動
・緊急避妊(ヤッペ法)
・過多月経改善
・生理不順改善
・月経困難症改善
・緊急避妊
含有ホルモン 卵胞ホルモン(エストロゲン)量
なし ~0.03mg 0.03mg~0.05mg 0.05mg~ なし
含有される黄体ホルモンの種類
・ノルエチステロン
・レボノルゲストレル
・デソゲストレル
・ノルエチステロン
・ドロスピレノン
・ノルエチステロン
・レボノルゲストレル
・デソゲストレル
・ノルゲストレル ・レボノルゲストレル
保険適用 避妊使用は対象とされない
月経困難症などの治療が必要と判断される場合


※一部

ピルの種類

アフターピル

アフターピルは、避妊に失敗したり性犯罪に巻き込まれたときなど、妊娠の可能性を大きく下げるために使用する緊急避妊薬であり、黄体ホルモンを含むことで排卵の抑制や受精の妨害をします。95%以上の効果があるとされていますが、中絶目的には使用できません。

主成分名【代表薬】
  • レボノルゲストレル【ノルレボ】
  • ウリプリスタール酢酸エステル【エラワン】

当クリニックで取り扱っているアフターピルは、
避妊効果が有効とされている時間が72時間タイプのノルレボジェネリック(レボノルゲストレル)と120時間タイプのエラワンジェネリック(ウリプリスタール酢酸エステル)の2種類です。

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中用量ピル

中用量ピルは、エストロゲン(卵胞ホルモン)・プロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類のホルモンが配合され、エストロゲンの配合量が多い特徴があります。生理不順、過多月経、月経困難症、生理日移動などの問題を解決するために使用されます。
従来の緊急避妊法である「ヤッペ法」で使用されるプラノバールもこの中用量ピルに該当します。

主成分【代表薬】
  • ノルゲストレル + エチニルエストラジオール【プラノバール】
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低用量ピル (OC)

低用量ピル (OC:Oral Contraceptives)は、エストロゲン(卵胞ホルモン)・プロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類のホルモンが配合された薬で、排卵を抑制し避妊効果があります。子宮内膜の増殖を抑制することで、生理痛や月経困難症の改善・治療に効果があり、月経量や生理痛を減らすことができます。ま
た、ホルモンバランスを整える効果もあり、ニキビや気分の落ち込み、生理前~生理中のつらい症状の改善、生理周期の整えるメリットがあります。

主成分名【代表薬】
  • ノルエチステロン + エチニルエストラジオール【シンフェーズ】
  • レボノルゲストレル + エチニルエストラジオール【トリキュラー】
  • デソゲストレル + エチニルエストラジオール【マーベロン/ファボアール】
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超低用量ピル (LEP)

超低用量ピル (LEP:Low dose Estrogen Progestin)は、エストロゲンの量が0.03mg以下の薬です。避妊効果についての試験はされていませんが、月経困難症や子宮内膜症の治療に使用されます。
低用量ピルに比べ少量のホルモン配合により、副作用が出にくいという特徴があります。

主成分名
  • ノルエチステロン + エチニルエストラジオール【ルナベル/フリウェル】
  • ドロスピレノン + エチニルエストラジオール【ヤーズ】

ミニピル (POP)

ミニピル (POP:Progestogen-Only Pill)は、黄体ホルモン(プロゲステロン)のみを含むピルで、エストロゲンが含まれていないため血栓症のリスクが低く、喫煙者や授乳中の女性でも使用できます。
ただし、肌に対する効果は弱く、飲み始めに不正出血が起こることがあります。
避妊目的で使用する場合は継続的な服用時間がずれると避妊効果が著しく低下します。

主成分名
  • ノルエチステロン 【ノリディ】
  • レボノルゲストレル 【ノルゲストン】
  • デソゲストレル 【セラゼッタ】

ピルの注意点と副作用

それぞれのピルの用途や効果は様々ですが、もちろん注意点や副作用もあります。
ピルを服用する前に血栓症のリスクについて知っておきたいことや、副作用として起こる可能性がある症状についてまとめました。
服用上の注意点を守りながら、安心して避妊に取り組みましょう。

種類 主な副作用 副作用
発現度
血栓症リスク
ミニピル(POP) ・不正出血
・気分不良
・頭痛 など
ホルモン量が少ないため出にくい
ほとんどない
超低用量ピル(LEP) ・不正出血
・頭痛
・悪心
・動悸
・眠気 など
エストロゲンを含有する中で最も出にくい
低め
※40歳以上・喫煙者は要注意
低用量ピル(OC) ・吐き気
・頭痛
・不正出血
・乳房の張り など
中用量に比べやや出にくい
やや注意
※特に喫煙者・肥満ぎみ・40歳以上
中用量ピル ・吐き気、嘔吐
・肝機能障害
・便秘、下痢
・乳房の張り など
比較的起こりやすい
やや注意
※特に喫煙者・肥満ぎみ・40歳以上
アフターピル ・吐き気、嘔吐
・頭痛
一時的に出ることがある
ほとんどない

血栓症への影響

血栓症とは?

血栓症とは、血管内に血の塊が詰まってしまい、血流が止まってしまう病気のことで、血栓ができる場所によって動脈血栓症や静脈血栓症などの種類があります。

血栓症とピルの関係

低用量ピルの服用は、静脈血栓症(VTE)のリスクを高めることが知られています。
エストロゲンの一種であるエチニルエストラジオールが血液凝固作用を持つため、血栓ができやすくなります。
また体内の水分不足により脱水症状になると血液が濃くなり、さらに血栓ができやすくなるため、水分補給が重要です。
遺伝的な体質や喫煙なども血栓症のリスクを高めることがあります。

一般的に、ピルを使用していない人が血栓症になるリスクは低く、1年間に1万人中1〜5人程度です。しかし、ピルを使用する人は、1年間に1万人中3〜9人程度のリスクがあります。ただし、普段から喫煙する人や糖尿病の持病がある人、高齢者などは血栓症リスクが高いため、ピルの服用有無にかかわらず注意が必要です。

  • 手足のしびれ
  • 足の浮腫み
  • 激しい頭痛
  • 激しい胸の痛み
  • 息苦しさ など

もしピルを服用中に上記の症状が現れたら、すぐに服用を中止して医師に相談しましょう。
血栓症は早期発見と治療により改善できる病気です。自己判断せずに、必ず医師の診断を受けましょう。

アフターピルと低用量ピルの併用

結論、アフターピルと低用量ピルを併用することは可能です。
ただし、すでに3ヶ月以上低用量ピルを使用している場合はある程度の避妊効果があるため、必ずしもアフターピルを服用する必要はありません。
ただし、月経困難症などで低用量ピルを処方されている場合は主治医に相談することをおすすめします。
アフターピルと低用量ピルの併用による副作用のリスクを最小限に抑えるためにも、医師の指導の下で適切な服用方法を確認することが重要です。

  • 2,3日飲み忘れた時があった気がする
  • 服用時間が大幅にずれてしまった
  • 嘔吐してしまった時があり、もしかしたらピルも吐き出した可能性がある

人によっては、上記の状態で不安な場合もあるかと思います。そういった時は低用量ピルを継続的に服用していても、アフターピルを併用することで効果的な場合もあります。

アフターピルと低用量ピルは併用できるが、代用はできない

アフターピルの"代用"にはならない

低用量ピルはアフターピルの代用にはなりません。
低用量ピルは、避妊効果を得るために継続的に服用する必要があります。そのため、緊急避妊が必要な場合に低用量ピルを服用しても、効果は期待できません。
実際には、妊娠の可能性がある状況で無防備な性交を行った場合には、やはりアフターピルを処方してもらう必要があるでしょう。

アフターピル服用後のピル再開

アフターピルを服用した翌日から低用量ピルの服用を再開できますが、避妊効果が得られるのは内服8日目以降となります。
そのため、低用量ピルの再開から8日間は、性行為をする場合コンドームなどの使用で避妊する必要があります。
また、アフターピル内服3週間後に妊娠検査を行うことをお勧めします。
アフターピルにより、生理周期が乱れることがあり、今回の生理周期の途中で不正出血が起こる可能性があるため注意が必要です。

服用する上で注意すること

種類によって異なる服用方法

全てのピルが同じ服用方法ではありません。
正しい服用方法を理解して、自分に合うピルを考えてみましょう。

飲み方
アフターピル 性行為後、1錠を水またはぬるま湯で服用。
レボノルゲストレル(ノルレボ)は72時間(3日)以内・ウリプリスタール酢酸エステル(エラワン)は120時間(5日)以内が有効時間。
中用量ピル ▼月経移動
早めるには月経初日から5日以内に10日間1錠内服。 内服終了後2-4日目から出血が始まる。
遅らせるには予定月経の5日前から1錠内服。 内服終了後2-4日目から出血が始まる。
▼ヤッペ法
性行為後72時間以内に2錠服用し、その後12時間後に2錠を追加服用。
低用量ピル ▼21錠タイプ
スタートから1日1錠ずつ服用。21錠目まで終わったら、7日間休薬期間を設ける。
▼28錠タイプ
スタートから1日1錠ずつ服用。28錠目まで終わったら、次のシートのスタートから飲み始める。最後の7錠はプラセボ(偽薬)
超低用量ピル ▼21錠タイプ
スタートから1日1錠ずつ服用。21錠目まで終わったら、7日間休薬期間を設ける。
▼28錠タイプ(ヤーズ)
スタートから1日1錠ずつ服用。28錠目まで終わったら、次のシートのスタートから飲み始める。最後の4錠はプラセボ(偽薬)
ミニピル 毎日同じ時間に1錠ずつ服用。
生理初日から飲み始め、休薬期間はなし。
スタートから1シートまで終わったら、すぐに次のシートを服用開始。

飲んではいけない人・併用できない薬

全てのピルには使用できない人や併用禁忌薬・注意薬があります。

アフターピル

アフターピルを服用してはいけない人は、薬剤に過敏症の既往歴がある方、妊婦、そして重篤な肝障害の方です。肝障害や心疾患・腎疾患などの既往歴がある方は、慎重に服用する必要があります。

併用禁忌薬には、抗けいれん薬、HIVプロテアーゼ阻害剤、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤、抗生物質、そしてセイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)があります。
これらの薬を併用すると、アフターピルの効果が減弱したり、副作用が強く現れたりする可能性があるため、注意が必要です。
詳細は下記の記事をご覧ください。

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服用出来ない人・飲みあわせの悪い併用禁忌薬

中用量ピル

中用量ピルは、妊娠中の方や肝機能が悪い方、血栓症のリスクが高い方は服用できません。35歳以上で喫煙者の方はリスクが大きいため、慎重に服用する必要があります。

いくつかの薬や食品との相互作用によって、本来の効果に影響が出る場合があります。
例えば、フルコナゾールやHIVプロテアーゼ阻害剤などの薬はプラノバールの効果を増強させることがありますが、リファンピシンやカルバマゼピン、ペニシリン系抗生物質などの薬はプラノバールの効果を減弱させることがあります。
詳細は下記の記事をご覧ください。

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プラノバールによるヤッペ法

超低用量/低用量ピル

低用量ピルを服用してはいけない人は、血栓症を持つ人やリスクの高い人、高脂血症のある人、高血圧症を薬でコントロールできない人、肥満の人、子宮頸がんや乳がんのある人、肝機能障害を持つ方です。35歳以上で1日15本以上喫煙する人も服用不可となっています。

併用禁忌薬に該当するのはヴィキラックス配合錠というC型肝炎の治療薬のみです。
その他、抗てんかん薬・リファンピシンなどの一部抗菌薬・アセトアミノフェン(解熱鎮痛薬)・三環系抗うつ薬・ステロイド・シクロスポリン(免疫抑制薬)などが併用注意薬に該当します。
併用することでピルの効果を減弱または増強、副作用が強く現れたりする可能性があるため、注意が必要です。

ミニピル

ミニピルを服用してはいけない人は、乳がんと診断された方、原因不明の膣内出血がある人、妊娠している方・または可能性がある方です。

併用する薬剤によっては注意が必要です。特に、黄体ホルモンの代謝を促進させる薬剤との併用は避けるべきです。抗てんかん薬のフェニトイン、カルバマゼピン、プリミドン、フェニルブタゾンや、抗生物質のリファンピン/リファンピシン、リトナビルブースト型プロテアーゼ阻害剤との併用は注意が必要です。また、肥満手術を受けた女性は、吸収が困難になる可能性があるため、注意が必要です。