「マンジャロを使えば痩せる」という情報がSNSなどで広まり、糖尿病ではない方がダイエット目的で使用するケースが増えています。
マンジャロは本来2型糖尿病の治療薬であり、安易な適応外使用には注意が必要です。
厚生労働省もGLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬について、適正使用や個人輸入による健康被害などに関する注意喚起を行っています。
この記事では、マンジャロの正しい位置づけやダイエット目的で使用するリスク、肥満症治療薬との違いについてわかりやすく解説します。
厚生労働省の注意喚起
厚生労働省は、GLP-1関連薬の美容・痩身目的での適応外使用について注意を呼びかけています。
マンジャロは医師の診断のもとで使用される医療用医薬品であり、自己判断で使用することは安全性の面から推奨されません。
特に、SNSやインターネット上では「簡単に痩せられる薬」といった情報が広がっていますが、医薬品には適切な使用方法や注意すべきリスクがあります。
下記の情報を参考に記述しています。
注意すべきポイント
マンジャロを使用する際には、以下の4つの点に注意が必要です。

ダイエット目的での安易な適応外使用
マンジャロの国内で承認されている効能・効果は2型糖尿病です。そのため、2型糖尿病と診断されていない方への使用は適応外使用となり、承認された範囲での安全性・有効性は確認されていません。
適用外使用では、患者の状態や治療目的に応じた医学的判断が必要であり、。十分な評価を行わずに使用すると、副作用等の健康被害につながる恐れがあります。
個人輸入やSNS・フリマアプリなどで購入した医薬品の使用
インターネットや個人輸入・SNS・フリマアプリなどで入手した医薬品は、正規の流通経路を経ていないため品質や保管状態が確認できず、偽造品である可能性もあります。
また、個人輸入した医薬品による健康被害は、国内で承認された医薬品を適正に使用した場合に対象となる医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。
品質が保証されない製品による健康被害
正規の流通経路以外で入手した医薬品では、偽造品が含まれている可能性があり、それらは有効成分が入っていないものや逆に過剰に含まれているもの、不純物や異物が混入しているものがあります。
期待した効果が得られないだけでなく、重い副作用や健康被害を引き起こす可能性があります。
医師の管理を受けずに使用することによる副作用リスク
マンジャロなどのGIP/GLP-1受容体作動薬では、吐き気・嘔吐・下痢・便秘などの消化器症状に加え、急性膵炎や胆のう疾患などの重い副作用がまれに起こることがあります。
他の糖尿病治療薬との併用では低血糖の大きなリスクもあるため、使用中は医師による適切な診察や経過観察が重要です。
マンジャロとはどのような薬?
マンジャロ(一般名:チルゼパチド)は、2型糖尿病の治療薬として承認されている週1回投与の注射薬です。
GIP受容体とGLP-1受容体の両方に作用する、世界で初めて承認されたGIP/GLP-1受容体作動薬です。
添付文書上の効能・効果は2型糖尿病であり、糖尿病と診断されていない方への使用は適応外使用となります。

マンジャロの主な作用
マンジャロにはインスリン分泌を促し、血糖値を改善する作用に加え、食事量や胃の動きに関わる作用があります。
主な作用は次の通りです。
- 血糖値を改善する
- 食欲調節に関与する作用
- 胃内容物の排出を遅らせる
これらの作用が組み合わさることで、食事量の減少や体重減少につながることが分かっています。
注目されている理由とリスクについて
先述した通りSNS等インターネット上で取り上げられる機会が増え、ダイエット目的で使用している方が増加
実際に臨床試験では体重減少が報告されていますが、その結果だけを見て自己判断で使用することは推奨されません。
ここでは、マンジャロがダイエット目的で注目されている理由と、知っておくべき副作用や注意点について解説します。

なぜダイエット目的で注目されているのか
マンジャロが痩せる薬として注目される理由は、臨床試験で体重減少効果が報告されているためです。
マンジャロはGLP-1だけでなくGIPにも作用することで食欲を抑え、摂取エネルギーを自然に減らし、体重減少につながると考えられています。
2021年に報告されたSURPASS-2試験では、2型糖尿病患者を対象に、チルゼパチドは血糖コントロールの改善に加えて体重減少効果も示しました。
また、2022年に報告されたSURMOUNT-1試験では、2型糖尿病を有しない肥満または過体重の成人を対象に、生活習慣改善と併用したチルゼパチドによる大きな体重減少が報告されています。
| 試験 | 公表年 | 対象 | 記事で使う目的 |
|---|---|---|---|
| SURPASS-2 | 2021年 | 2型糖尿病患者 | 糖尿病治療薬としての血糖改善+体重減少効果 |
| SURMOUNT-1 | 2022年 | 糖尿病なしの肥満・過体重成人 | 肥満領域での体重減少効果 |
下記の情報を参考に記述しています。
- PubMed(PMID: 34170647) Tirzepatide versus Semaglutide Once Weekly in Patients with Type 2 Diabetes
- PubMed(PMID: 35658024) Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity
- PubMed(PMID: 42184419) Tirzepatide Versus Intensified Conventional Care After 2 Years of Treatment in Early Type 2 Diabetes : A Randomized Clinical Trial
ですが、これらの結果は糖尿病または肥満症患者を対象とした試験であり、健康な人が美容目的で使用した場合の有効性・安全性を示したものではありません。
ダイエット目的で使用するリスク
マンジャロは体重減少効果が期待される一方で、血糖値を管理するために使用される医療用医薬品であり。もちろん副作用のリスクがあります。
主に副作用や注意すべき症状には、以下の様なものがあります。
- 吐き気
- 嘔吐
- 下痢
- 便秘
- 食欲低下
が挙げられます。発生頻度は患者の状態や併用薬などによっても異なります。
- 急性膵炎
- 胆のう疾患
- 重度の胃腸障害
- 低血糖(特にインスリン製剤や一部の糖尿病治療薬との併用時)
など重大な副作用も報告されています。
美容目的で安易に使用することは、こうした副作用リスクを伴うため注意が必要です。
体重減少効果が報告されている糖尿病治療薬
代表的な糖尿病治療薬には、それぞれ作用の仕組みや投与方法などに違いがあります。

ここでは、体重減少効果が報告されている薬剤として、マンジャロ(チルゼパチド)、オゼンピック(セマグルチド)、ビクトーザ(リラグルチド)、トルリシティ(デュラグルチド)を取り上げます。
マンジャロは、GIP受容体とGLP-1受容体の両方に作用する点が大きな特徴です。
一方、オゼンピック、ビクトーザ、トルリシティはいずれもGLP-1受容体作動薬に分類されます。また、オゼンピックとトルリシティは週1回、ビクトーザは1日1回と、投与頻度にも違いがあります。
これらの薬剤では体重減少がみられることがありますが、いずれも日本では2型糖尿病の治療を目的として承認されている医療用医薬品です。体重が減少することと、美容目的のダイエット薬として承認されていることは別の話である点に注意が必要です。
肥満症治療薬との違い
体重減少を目的とした薬には、糖尿病治療薬だけでなく、肥満症の治療を目的として承認された薬もあります。
ここで知っておきたいのが、マンジャロとゼップバウンドの違いです。どちらも有効成分はチルゼパチドですが、承認されている効能・効果が異なります。
マンジャロは2型糖尿病の治療薬として、ゼップバウンドは肥満症の治療薬として承認されています。つまり、同じ有効成分を含んでいても、承認された目的や使用する対象が異なるということです。

下記の情報を参考に記述しています。
- Zepbound Prescribing Information FDA
- 医療用医薬品 : ゼップバウンド KEGG MEDICUS
本当に薬による治療が必要?
体重が気になる場合でも、すぐに薬による治療が必要になるとは限りません。まずは現在の体格や健康状態を確認し、肥満症に該当するか、生活習慣の改善だけで十分なのかを医師に相談することが大切です。
まずはBMIを確認しましょう。
BMI=体重(kg)÷身長(m)²
日本肥満学会では
- 18.5未満:低体重
- 18.5〜24.9:普通体重
- 25以上:肥満
と分類されています。
日本肥満学会では、BMI25以上を「肥満」としています。ただし、BMIが25以上であることだけで、肥満症と診断されたり、肥満症治療薬の使用対象になったりするわけではありません。
肥満症は、肥満に加えて、肥満に起因する健康障害がある場合や、健康障害を起こす可能性が高い内臓脂肪型肥満などを含め、医学的に治療が必要と判断される状態です。
そのため、単に体重を減らしたいという理由だけで肥満症治療薬を使用するのではなく、BMIだけでなく、健康状態や肥満に関連する疾患などを含めて医師が総合的に判断することが重要です。
下記の情報を参考に記述しています。
- 肥満と肥満症について 一般社団法人日本肥満学会
SNSで広がるダイエット薬の誤解
SNSではマンジャロなどの医療用医薬品について、様々な情報が発信されています。
しかし、医師の診察や医学的な根拠に基づかない情報も含まれているため、内容をそのまま信じるのは危険です。
例えば、次のような情報には注意が必要です。
- 誰でも処方してもらえる
- 副作用はほとんどない
- やめてもリバウンドしない
- 個人輸入した方が安く、安全に入手できる
マンジャロなどの医療用医薬品は、患者の健康状態や既往歴、併用薬などを確認したうえで、医師が治療上の必要性を判断して使用するものです。オンライン診療であっても、医師が診察したうえで処方の可否を判断します。厚生労働省も、オンライン診療では医師が適切でないと判断した場合には利用できないことなど、適切な診療を行うためのルールを定めています。
また、マンジャロなどのGLP-1受容体作動薬等について、厚生労働省は美容・痩身・ダイエット目的での使用について注意喚起しており、そのような目的で使用した場合の安全性・有効性は確認されていないとしています。
個人輸入についても注意が必要です。厚生労働省は、個人輸入された医薬品について、偽造品である可能性や、成分・分量、品質などが十分に確認できない場合があることを注意喚起しています。
安全な体重管理のためのチェックリスト
薬による治療を検討する前に、次のポイントを確認しましょう。

体重管理は薬だけでなく、生活習慣の改善と組み合わせて取り組むことが重要です。
よくある質問
SNSやフリマサイトで売っているマンジャロを購入していいの?
購入しないでください。
マンジャロを含むGLP-1受容体作動薬等の医薬品を、SNSやフリマサイトなどを利用して個人間で売買することは認められていません。厚生労働省も、インターネット等での医薬品の個人間売買について注意喚起しています。
また、個人間で入手した医薬品は、適切な品質管理が行われているか確認できず、偽造品や品質に問題のある製品が含まれる可能性もあります。健康被害につながるおそれがあるため、SNSやフリマサイトなどから購入することは避けてください。
クリニックでオンライン診療でどうしても欲しいので、BMIの問診は嘘ついてもいい?
虚偽の申告は行わないでください。
BMIだけでなく、既往歴、現在の健康状態、服用中の薬なども、医師が処方の可否や安全性を判断するために重要な情報です。
実際とは異なる情報を申告すると、医師による適切な診断や副作用・相互作用などのリスク評価を妨げる可能性があります。
薬を処方してほしいという理由でBMIなどを実際より高く申告するのではなく、現在の体重や健康状態を正確に伝えたうえで、薬による治療が適しているか医師に相談しましょう。
医師から処方されたマンジャロなら、ダイエット目的でも問題ない?
マンジャロは、日本では2型糖尿病の治療薬として承認されています。一方、肥満症の治療には、同じチルゼパチドを有効成分とするゼップバウンドが承認されています。
そのため、医師から処方されたから、どのような目的で使用しても問題ないと考えるのは適切ではありません。
ただし、医師が患者の健康状態や治療上の必要性などを診察したうえで処方する個々の診療について、適応外使用であることだけを理由に一律に判断することはできません。
重要なのは、BMIや健康状態、既往歴などを確認せず、痩せたいという希望だけで処方するのではなく、医師が患者の状態を適切に評価したうえで治療方針を判断することです。
まとめ
マンジャロ(チルゼパチド)は2型糖尿病の治療薬として承認された医療用医薬品であり、ダイエット目的での使用は本来の適応とは異なります。
厚生労働省も、適応外使用や個人輸入、品質が保証されていない医薬品の使用について注意喚起を行っています。
一方、日本では肥満症治療薬としてウゴービやゼップバウンドが承認されており、一定の基準を満たした患者に対して医師の管理下で使用されます。
体重が気になる場合は、SNSなどの情報だけで判断せず、まずはBMIや健康状態を確認し、医師に相談することが大切です。適切な診断のもとで、自分に合った安全な体重管理を進めましょう。
下記の情報を参考に記述しています。
- 医療用医薬品 : マンジャロ KEGG MEDICUS
- 製薬企業からの適正使用等に関するお知らせ PMDA
- 上野大臣会見概要 厚生労働省



