エクソソーム

エクソソーム点鼻は男性更年期に効果がある?研究から期待される可能性を解説

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エクソソーム点鼻と男性更年期の関係について、テストステロン・性機能、神経・認知機能などの研究から期待される可能性を解説する医療コラムのサムネイル。

「最近、疲れやすくなった」「以前より気力が続かない」「寝ても疲れが残る」——こうした変化の背景には、男性更年期(LOH症候群)が関係していることがあります。

近年では、細胞同士の情報伝達に関わるエクソソーム(細胞外小胞)の研究が進み、神経系や炎症、男性生殖機能など幅広い領域への応用が検討されています。

さらに、エクソソームを鼻から投与する「点鼻・鼻腔投与」についても、アルツハイマー病などを対象としたヒト臨床試験が報告されています。

現時点ではエクソソーム点鼻が男性更年期に対する効果が確立された治療ではありませんが、エクソソームそのものについては、男性生殖機能やテストステロン産生に関わる細胞間情報伝達、神経機能などとの関連が研究されています。

この記事では、男性更年期の基本から、エクソソーム点鼻について現在どこまで研究が進んでいるのかまで、最新の知見をもとに解説します。

男性更年期(LOH症候群)とは?

男性更年期(LOH症候群)の概要を示したイラスト。テストステロン低下に伴う主な症状として、疲れやすさ・倦怠感、気力や集中力の低下、気分の落ち込み・イライラ、睡眠の変化、性欲低下、ED、筋力・体力の低下、発汗・ほてりを紹介している。

男性更年期として知られるLOH症候群は、テストステロンの低下などを背景として、身体・精神・性機能にさまざまな症状が現れる状態です。

男性更年期に見られる主な症状
  • 身体症状
  • 精神・心理症状
  • 性機能症状

代表的な症状には、疲れやすさや倦怠感、気力・集中力の低下、気分の落ち込み、睡眠の変化、性欲低下、ED(勃起障害)、筋力・体力の低下、発汗・ほてりなどがあります。

ただし、こうした症状は睡眠障害や甲状腺疾患、うつ病などでもみられるため、症状だけで男性更年期と判断することはできません。

日本泌尿器科学会・日本メンズヘルス医学会の「LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引き」でも、LOH症候群におけるテストステロン低下は、必ずしも単純な加齢現象だけで説明できるものではないとされています。

参考文献・参考リンク

下記の情報を参考に記述しています。

男性更年期はどのように診断・治療する?

男性更年期の診断では、症状についての問診とともに、血液検査によるテストステロンの評価が重要です。

日本の2022年版LOH診療手引きでは症状がある場合、総テストステロン250 ng/dL未満を一つの基準とし、総テストステロンが250 ng/dL以上でも症状が強い場合には遊離テストステロンを測定し、7.5 pg/mL未満を基準として総合的に判断します。

ただし、テストステロン値だけで診断するのではなく、症状や病歴、身体状態などを含めて総合的に評価します。

治療では生活習慣へのアプローチや症状に応じた治療を行い、必要と判断された場合にはテストステロン補充療法(TRT)が検討されます。

低テストステロンかつ症状のある男性を対象とした臨床試験では、テストステロン補充療法によって性欲や性活動などが改善したことが報告されています。

一方、勃起機能への効果については研究によって結果が異なり、すべての男性更年期症状がテストステロン補充によって改善するわけではないため、治療の適応については医師による適切な評価が必要です。

参考文献・参考リンク

下記の情報を参考に記述しています。

  • PubMed(PMID: 27355400) Cunningham GR, Stephens-Shields AJ, Rosen RC, Wang C, Bhasin S, Matsumoto AM, Parsons JK, Gill TM, Molitch ME, Farrar JT, Cella D, Barrett-Connor E, Cauley JA, Cifelli D, Crandall JP, Ensrud KE, Gallagher L, Zeldow B, Lewis CE, Pahor M, Swerdloff RS, Hou X, Anton S, Basaria S, Diem SJ, Tabatabaie V, Ellenberg SS, Snyder PJ. Testosterone Treatment and Sexual Function in Older Men With Low Testosterone Levels. J Clin Endocrinol Metab. 2016 Aug
  • PubMed(PMID: 37589949) Pencina KM, Travison TG, Cunningham GR, Lincoff AM, Nissen SE, Khera M, Miller MG, Flevaris P, Li X, Wannemuehler K, Bhasin S. Effect of Testosterone Replacement Therapy on Sexual Function and Hypogonadal Symptoms in Men with Hypogonadism. J Clin Endocrinol Metab. 2024 Jan 18

エクソソーム点鼻とは?

エクソソームは、細胞から放出される細胞外小胞(Extracellular Vesicles:EV)の一種です。

タンパク質や脂質、マイクロRNAなどさまざまな分子を運び、細胞同士の情報伝達に関わっています。

こうした特徴から、神経疾患、炎症、組織修復など幅広い領域への応用が研究されています。

その投与経路の一つとして注目されているのが鼻腔投与です。

鼻から投与する方法は針を使わない非侵襲的な投与経路であり、鼻腔から中枢神経系へ物質を届ける「nose-to-brain pathway」を利用したドラッグデリバリーについても研究が進んでいます。

2025年にJournal of Controlled Releaseに掲載されたレビューでも、細胞外小胞の鼻腔投与について、神経疾患や呼吸器疾患への応用可能性とともに、脳への送達経路や今後解決すべき課題が整理されています。

ただし、鼻から投与したエクソソームがどの程度吸収され、どこへどれだけ届くかは、エクソソームの由来や粒子特性、製剤、投与条件などによって異なります。

そのため、点鼻すればエクソソームが脳や全身へ確実に届くと確立されているわけではありません。

参考文献・参考リンク

下記の情報を参考に記述しています。

  • PubMed(PMID: 39800240) Sánchez SV, Otavalo GN, Gazeau F, Silva AKA, Morales JO. Intranasal delivery of extracellular vesicles: A promising new approach for treating neurological and respiratory disorders. J Control Release. 2025 Mar 10;379:489-523. doi: 10.1016/j.jconrel.2025.01.018. Epub 2025 Jan 18. Erratum in: J Control Release. 2025 Jul 10

エクソソーム点鼻はヒトを対象とした研究も始まっている

点鼻エクソソームの研究は、すでに動物実験だけではなく、ヒトを対象とした初期の臨床研究まで進んでいます。

代表的なのが、軽度~中等度アルツハイマー病患者を対象としたPhase I/II臨床試験です。

この研究では9人の患者に、ヒト脂肪組織由来間葉系間質細胞(MSC)由来エクソソームを鼻腔投与し、安全性や忍容性、認知機能などが評価されました。

重大な有害事象は報告されず、鼻腔投与の安全性・忍容性について初期的な結果が報告されています。

ただし対象者は9人と少なく、この結果だけでアルツハイマー病への治療効果や、ほかの疾患への有効性を判断することはできません。

それでも、エクソソームの鼻腔投与が実際にヒトを対象とした臨床研究の段階まで進んでいることを示す重要な報告です。

日本でも、iPS細胞由来エクソソームを点鼻投与し、中高齢者の認知機能や筋力、免疫機能などを探索的に評価する研究がjRCTに登録されています。ただし、研究登録は有効性が証明されたことを意味するものではありません。

参考文献・参考リンク

下記の情報を参考に記述しています。

エクソソーム点鼻は男性更年期に期待できる?

現時点では、男性更年期(LOH症候群)の患者にエクソソームを点鼻し、有効性を検証した臨床試験は確立されていません。

そのため、「エクソソーム点鼻で男性更年期が改善する」「点鼻によってテストステロンが増える」と断定できる段階ではありません。

一方で、男性更年期と関係の深いテストステロン産生、性機能・血管機能、神経機能などの領域では、エクソソーム・細胞外小胞の研究が進んでいます。

エクソソーム研究で注目される3つの領域を示したイラスト。テストステロン産生、男性生殖機能、神経・認知機能について、それぞれの研究で期待されている可能性をシンプルに紹介している。

テストステロン産生とエクソソームの関係

男性更年期との関連で特に興味深いのが、エクソソームとテストステロン産生についての研究です。

テストステロンは主に精巣に存在するライディッヒ細胞で作られています。

骨髄由来間葉系幹細胞(BMSC)由来エクソソームを用いた研究では、シクロホスファミドによってテストステロン産生が低下したモデルに対して、エクソソームがライディッヒ細胞のオートファジーなどに作用し、低下したテストステロン産生を改善する可能性が報告されています。

これは、エクソソームと男性ホルモン産生の間に生物学的な接点が存在する可能性を示す興味深い結果です。

ただし、この研究は男性更年期患者を対象とした臨床試験ではなく、動物・細胞を用いた基礎研究です。また、エクソソームを点鼻した研究でもありません。

エクソソーム点鼻

ライディッヒ細胞に作用

テストステロン上昇

男性更年期改善

という一連の流れがヒトで確認されているわけではありません。

今後、ヒトを対象とした臨床研究による検証が必要です。

参考文献・参考リンク

下記の情報を参考に記述しています。

  • PubMed(PMID: 36537377) Liang HY, Peng F, Pan MJ, Liao SL, Wei C, Wei GY, Xie X, Xue KY, Chen MK, Yang JK, Guo WB, Liu CD, Zhou QZ. Exosomes derived from BMSCs ameliorate cyclophosphamide-induced testosterone deficiency by enhancing the autophagy of Leydig cells via the AMPK-mTOR signaling pathway. Asian J Androl. 2023

男性生殖機能とエクソソームの研究

男性更年期では、性欲低下やED(勃起障害)がみられることがあります。

エクソソームや細胞外小胞の研究では、血管新生、血管内皮機能、神経保護、組織修復などへの作用が検討されています。
これらの研究から、将来的には男性の性機能に関する疾患への応用が検討される可能性があります。

ただし、現在の研究の多くは基礎研究や前臨床研究であり、男性更年期に伴う性欲低下やEDに対して、エクソソーム点鼻が有効であることを示した臨床的根拠はありません。

現段階では、男性の性機能に関連する領域でもエクソソーム研究が進められている状況です。

神経・認知機能への応用研究

疲労感や集中力の低下、気分の変化なども男性更年期でみられることがあります。

エクソソームを含む細胞外小胞については、神経保護や炎症反応の調節など、神経系との関係について多くの研究が行われています。

点鼻投与については、前述したアルツハイマー病患者へのPhase I/II試験まで進んでおり、鼻腔から中枢神経系へのEV送達の可能性についても研究されています。

2025年のレビューでも、中枢神経疾患に対するエクソソームの鼻腔投与は非侵襲的なアプローチとして期待される一方、安全性、製剤の標準化、投与量、臨床的有効性などについて、さらに検証が必要とされています。

ただし、アルツハイマー病の研究結果を男性更年期に伴う集中力低下や気分の変化にそのまま当てはめることはできませんが神経・認知機能改善への可能性として注目されています。

参考文献・参考リンク

下記の情報を参考に記述しています。

  • PubMed(PMID: 37859748) Xie X, Song Q, Dai C, Cui S, Tang R, Li S, Chang J, Li P, Wang J, Li J, Gao C, Chen H, Chen S, Ren R, Gao X, Wang G. Clinical safety and efficacy of allogenic human adipose mesenchymal stromal cells-derived exosomes in patients with mild to moderate Alzheimer’s disease: a phase I/II clinical trial. Gen Psychiatr. 2023 Oct 11
  • PubMed(PMID: 41310241) Arjmand B, Mojavezi AR, Kamroo A, Yazdi RK, Rezaei-Tavirani M, Vahedi MS. Advances in Intranasal Delivery of Exosomes for Central Nervous System Disorders. Mol Neurobiol. 2025 Nov 27

男性更年期への効果はまだ確立されていない

エクソソーム研究の進展段階を横方向に示したシンプルなイラスト。基礎研究、動物・前臨床研究、ヒト臨床研究、男性更年期への臨床研究の順に並び、男性更年期への臨床研究は現時点で未検証であることを示している。

これまで紹介した研究から、エクソソームがテストステロン産生や男性生殖機能などに関係する可能性は研究されています。しかし、これらは主に基礎研究や前臨床研究であり、エクソソーム点鼻を男性更年期(LOH症候群)の患者に使用して、テストステロン値や症状の改善を確認した臨床試験とは異なります。

そのため、2026年現在、エクソソーム点鼻が男性更年期(LOH症候群)の治療法として確立されているとはいえません。

一方で、エクソソーム点鼻の研究は、動物実験だけでなくヒトへの鼻腔投与を行う臨床研究まで進み始めています。

さらに基礎研究では、テストステロン産生、ライディッヒ細胞、血管・性機能、神経機能、炎症反応など、男性更年期と関連する複数の領域で研究が行われています。

現在は、

「男性更年期への効果がないとわかっている」のではなく、「関連する研究は進んでいるものの、男性更年期への有効性はまだ検証されていない」

という位置づけが適切です。

今後、男性更年期を対象とした臨床研究によって、安全性や有効性を検証していく必要があります。

エクソソーム点鼻と男性更年期に関するよくある質問

男性更年期ならエクソソーム点鼻を受けた方がいいですか?

男性更年期が疑われる場合は、まず医療機関で症状の原因を確認することが重要です。

疲労感、意欲低下、睡眠の変化、性欲低下などは、テストステロン低下以外の原因でも起こります。

そのため、エクソソーム点鼻を検討する場合でも、男性更年期の診断や標準的な治療の代わりにするのではなく、現在わかっている研究結果と限界について説明を受けたうえで判断することが大切です。

エクソソーム点鼻とテストステロン補充療法は同じですか?

まったく異なります。

テストステロン補充療法(TRT)は、不足しているテストステロンを外部から補う治療です。

一方、エクソソーム点鼻はテストステロンそのものを補充する治療ではありません。

2026年現在、エクソソーム点鼻によって男性更年期患者のテストステロン値が上昇することは現在確認されていません。

エクソソーム点鼻でテストステロンは増えますか?

現時点では「増える」とはいえません。
動物・細胞研究では、エクソソームとライディッヒ細胞・テストステロン産生との関係が研究されていますが、男性更年期患者への点鼻投与によってテストステロン値が上昇することは確認されていません。

詳しくは「テストステロン産生とエクソソームの関係」で解説しています。

まとめ

エクソソーム点鼻が男性更年期を改善するという臨床的なエビデンスは、2026年現在まだ確立されていません。

一方、点鼻エクソソームの研究そのものは一歩ずつ進んでおり、アルツハイマー病患者への試験では実際にヒトへの鼻腔投与が行われています。

さらに基礎研究では、テストステロンを産生するライディッヒ細胞、血管・性機能、神経、炎症など、男性更年期と関連する複数の領域で研究されています。

現段階では、男性更年期が疑われる場合には、まずテストステロン値などを適切に評価し、必要な治療を受けることが基本です。

そのうえでエクソソーム点鼻については、男性更年期の治療として確立された方法ではなく、ヒトを対象とした鼻腔投与研究が始まっている段階にあり、男性更年期への有効性については今後の研究が必要なアプローチとして捉えるのが適切です。